7月の「米国雇用統計」結果を受けて、市場では再度利上げへの関心が高まりつつあります。
毎回このコラムでもご紹介している「FedWatch」はその利上げ確率を高めており、9月は依然15%ながら12月は0.5%以上の確率が「43.4%」にまで上昇しつつあります。
ただ、ここから秋口の市場は米国の大統領選挙が本格化することになります。
9月の利上げを見送れば大統領選挙にひっかかる11月の利上げは誰がみても想定できず、まかり間違って「トランプ候補」が勝利となれば翌年から「FRB」議長の首がすげ変わることも想定され、最後に「イエレン議長」が利上げを行うのかという疑問も生じることとなります。
ダメな理由を挙げ始めたら、いつまでたっても利上げにならないという事態が継続することになるのです。
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FRBの利上げで0.25%一回限りは異例中の異例
米国における利上げの歴史を見ますと、一旦上げ始めた金利は連続して一定レベルまで上昇させていることが目に付きます。
もちろん昨今の世界的な低金利時代にあっては、連続して利上げを行うといっても限界があることは事実ですが、2000年から2001年にかけての利上げと2004年から2006年にかけての利上げを見ても、継続的な利上げが行われているのは事実です。
あとにも先にも「一回限り」という政策は、かなり異例なものとなっていることだけは間違いありません。
「イエレン議長」は就任後まだ一度も市場の暴落などの厳しい洗礼を受けていないことから、とにかく自分が引き金になって失敗しないことに異常とも思えるほど気を使っている気配濃厚で、利上げを先送りするたびに、利上げを阻害する要因が登場することから、一段と利上げ実行時期の判断に苦慮しているようにも見えます。
米国経済指標はまだら模様継続
7月末に米国商務省が公表した4~6月の「GDP速報値」は予想の半分以下の1.2%増という驚愕の低レベルにとどまっており、ここのところ3ヶ月の「貿易収支」をみていても赤字が拡大していることから、この確報値は1%を割る可能性も指摘されはじめています。
またその一方で米供給管理協会(ISM)が発表した7月ISM製造業景況指数は52.6と、市場予想53.0を下回りましたが、なんとか5か月連続で50を上回り活動の拡大を示しています。
主要項目である新規受注は56.9と、7カ月連続で50を上回ってはいるものの、雇用は再び50を割り込み、製造業の雇用は縮小に転じているところが気になります。
輸出も52.5と、5か月連続で50を上振れたものの、6月53.5からは低下して「GDP」の低下を裏付けるような内容となっており、すばらしくいいとも悪いともいえない微妙な数字の発表が続いています。
FRBが影の指標と見る米国株価は上昇後走らない
出展:Yahooファイナンス
「BREXIT」後大きく上申した米国の株式市場は「S&P」が新高値を更新したにもかかわらず、そこから大きく走ることはなく、逆にゆっくり下落する始末です。
株価を見て利上げを決めているのではと揶揄されがちな「FRB」も現状の相場から見ると、一気に9月にでも利上げしようとい気にはならないことも事実です。
新興国や資源国経済にはプラスなれどドル円は下落要因
米国の利上げが後ずれしている状況は、新興国や資源国の株と為替には大きな支援材料となりますが、ことドル円に関してはほかにドルを上昇させる材料が乏しいだけに利上げ後退はドル安円高に動きやすく、この12月までの利上げ期待が剥落することになれば、一段とドル安による円高が進みそうな気配となっています。
ここからは夏休み明けのジャクソンホールでの「イエレン議長」の発言に注目が集まりそうですが、8月中に明確な指針が果たして出せるのかどうかは疑問です。結果として利上げ期待をひきずりながら年内には行えないという可能性も考えておく必要がありそうです。
利上げは一時的にはドルを上昇させるものの結局株価が下落して少なくともドル円については円高になる可能性が高くなりますので、いずれにしても高値は売り場としてかなり意識すべきポイントになります。
(この記事を書いた人:今市太郎)