18日の朝3時に発表された7月の「FOMC議事録」は一言でいえば「利上げはある可能性もあるし、ないかもしれないと」いった内容でここからの利上げについての大きなヒントにはなっていません。
ただし明確に利上げを主張した委員がいることだけは明らかになり、年内は利上げがないかもしれないと高を括るのは早まりすぎであることを示唆する内容であったといえます。
9月の利上げについては、市場がまったく織り込んでいませんから、ここから急に利上げというわけにはいかなさそうで、結局のところ「大統領選挙後」に年内利上げするかしないかが最大のポイントになりそうです。
ところで26日のジャクソンホールに向けて各地区連銀の総裁が弱気、強気をとりまぜた発言をはじめていますが、その中でもとりわけ注目される内容を開示することになったのがサンフランシスコ連銀の「ウイリアムズ総裁」です。
インフレターゲットを引き上げる発言をしたウイリアムズ総裁
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サンフランシスコ連銀の「ウイリアムズ総裁」は15日に公表した論文で「インフレ」ターゲットを引き上げてもいいのではないかとい内容を発表しています。
ただ、これだけを見ているとよくわかりませんが、つまりドルを「インフレ」通貨にして、必要以上に「インフレ」気味にすることで「ドル売りからドル安」を示現するようにすることを暗に示唆する内容を打ち出したわけです。
皆さんご存知のように「インフレ」通貨というのはブラジルレアルにせよロシアルーブルにせよ売られやすいものとなり、無理して「インフレ」にすれば自国通貨は放置しておいても売られて安くなるのは間違いありません。
ウイリアムズ総裁はこのことを言っているわけで、これがどこまで「FRB」の総意になるのかはわかりませんし、そもそも日本では2%の「インフレ」さえ人為的に起こすことができずに困っているわけですから、米国がターゲット引き上げることで簡単に「インフレ」気味の状況を作り出せるのかどうかは判りませんが、少なくともドル安を意識した発言を持ち出してきていることだけは理解できます。
このウイリアムズ氏の論文公開はたまたま登場したものではなく、今後の「FOMC」を含めたスケジュールを視野に入れながら市場の反応をとるためにこの時期に開示されたものと思われます。
米国が満足するドル安レベルとは?
こうしたウイリアムズ総裁の発言も手伝って、足元のドル円は100円割れを試しましたしユーロドルもさしたる理由もないままに大きく上昇することとなっていますが、果たして米国が満足するドル安というのはここからどのレベルなのかが非常に気になるところです。
ドル円でいいますと昨年の高値の125円レベルからはすでに25円ほど下げているわけですが、これがまだ適正レベルではないとなると、90円方向にもう一段下げることも視野に入れる必要がでてくることになります。
「中央銀行」は為替のレベルについて言及することは避けるのが基本になっていますから、具体的にここまでといったことは出てこないものと思われますが、日本の金融当局はよほどのことが無い限り「為替介入」はできない状況に追い込まれつつあり、毎日1円程度ずつ下落した場合には90円でも介入は難しくなりそうです。
もはや主要国が画策する「自国の通貨安」は戦争に近いレベルにまで達している感もありますが、日本も過去3年間こうした動きを率先してやってきた存在だけに米国のドル安政策にどこまで協調する気があるのかが大きな問題になりそうです。
こう言われて見ますと、日銀が7月の政策決定会合で「ETF」の買い入れ倍増だけを打ち出した背景も、為替に影響を与えないようにとの配慮が働いていたのではないかと詮索したくなります。
為替は諦めて株高だけ引き続き進行させていくのだと考えれば、妙に整合性が出てくるわけですが、9月に予定されている日銀による「金融緩和」の枠組み検証も米国への配慮が働くのかどうかが気になるところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)