市場の過大な期待を背負って発表となった8月の「米国雇用統計」ですが、結果は非農業部門の就業者数は前月より15・1万人増となり、市場予想の約18万人を下回りました。
しかし労働市場が改善している中にあっては悲観的な数字ということでもなく、相場は発表直後102.800円台まで突っ込む動きをしましたが、その後買い戻され104.300円レベルまで逆に買いあがる展開となりました。
ただ、104円30銭から上にある抵抗ラインはさすがに突破することができず、月曜日は米国がレイバーディでお休みということもあって、その後一旦102.833円レベルまで緩む展開となりました。
午後の時間帯はほとんど取引がなくなってしまったことから、逆に底堅い展開を続けてNYタイムを引けています。
市場の見方は二分か
利上げはデータ次第と明言した「イエレン議長」に合わせて市場はデータに大きく注目するようになっていますが、8月の「雇用統計」結果は失望というほど悪い数字ではないものの、9月に利上げを積極的に行うことができるほどの数字というわけでもなく、なかなか微妙な数字になったことから、引き続き9月21日までは利上げの可否をめぐる憶測が継続することになりそうです。
ただ、毎回ご紹介しておりますフェデラルファンドレートの予測では、8月26日直後のフィッシャー議長発言で上昇した確率からまたしてもさらに下がってきて21%にまで下落しているのもまた事実であり、とくに株価はこの結果を好感して上昇していますのでまったく利上げは織り込まれていないのが実情となっています。
一方でまだ利上げを期待している向きも市場には残されており、9月利上げなしと予測する向きと拮抗しながら相場が継続することも予想されます。
ただ前回昨年12月の利上げでも「FRB」史上ISM製造業景況感指数が50%を切ったのにはじめて利上げをした議長として注目される存在ですから、まだ何があるかはわからない状態といえます。
見事に一目均衡表の雲の下限に抑えられた相場
市場では米系ファンドが無理やりドル円を買い上げようとしている気配濃厚ですが、面白いことにまたしても「一目均衡表」の雲にドル円は行く手を抑えられており、ここから105円を突破するには相当なエネルギーが必要な状況になってきています。
輸出勢は9月に入ってからのドル円の上昇で少なくとも年末102円の為替の確保はできたようで、需給的には落ち着いていますが、104円を超えるレベルでは改めて売りを出してくることが考えられ、上方向はそれほど明るい青天井ではないことがわかります。
どこでこの相場が崩れるのかが問題
利上げの可否については21日まで待てば判ることですが、果たして相場がその前に崩れることになるのか?21日の結果を見るまで引っ張るのかが大きな注目点です。
またこのコラムでも再三ご紹介しておりますとおり、同日に実施される「日銀の政策決定会合」の動き次第ではドル円の下落に拍車がかかることも十分に予想され、8月とは打って変わって9月相場はかなり面白い展開になってきています。
それでもチャートは相場の事実を伝えてくれ、その限界も明確に示していますので、戻り売りで臨むにしても効果のあるポイントでエントリーしていくことが重要です。
上下の変動が大きいだけにそれだけ利益機会にも恵まれるのが今月の相場ということになりそうです。ただ、ポンドやユーロには驚くほどのショートポジションが積みあがってきていろ、クロス円でこうした通貨が下げ渋りの状態となっていることがドル円にも影響を与えていますので、このあたりの動きも常に注目することが必要になってきています。
とくにポンド円は気がつけば138円台後半にまで回復する脅威的な上昇を示現しており、ドル円に少なからず影響を与える存在になっていることにはかなり注意が必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)