FXの取引をする個人投資家にとっては9月12日からの一週間は21日の2つのビッグイベントを控えて市場が膠着状態にあり、上げたり下げたりの繰り返しであったといった印象が強く残ったものと思われます。
しかし世界的に見ますと金融市場には一定以上の異変が訪れているようで、なんらかの変化が起ころうとしているのを市場が示唆しているようにも見えます。
BOfAの調査結果が刺激的
バンクオブアメリカ・メリルリンチが発表した調査結果によりますとファンドなどの投資を専門に行う、いわゆるプロの投資家筋は手持ちの現金を大きく増やす状況にあり、この規模はなんとここ15年で最大のレベルに迫っていることを発表しています。
株式ファンドのように株に投資するのが主たる商売のところでも、現金比率を高めて様子を見ているというわけですから、事態は深刻っで、高値を継続させてきた米国の株式市場がどうも商いをともなってこなかったここ数ヶ月の状況や日銀の「ETF」買いで下落は免れている日経平均がまったくぱっとしないという状況もこの話とかなり符合していることがわかります。
同社の9月の月間調査によりますと、資産運用会社は現金資産の比率を5.5%に引き上げており、2001年11月以来の最高に迫っているとのことで、調査回答者のうち、株式と債券は割高になっているとみる投資家は過去最高の54%に上っているといいます。
世界的に金利が消滅しイールドハンティングから米国の株式市場での配当狙いに資金が集まってきたわけですが、既に多くの投資ファンドが割高感から株からも債券からも撤退して様子を見ていることが理解できます。
たしかに足元の相場の動きはこれをしっかり反映したものとなっており、とくに9月9日以降この傾向は一層顕著になってきている状況です。
これは単に主要「中央銀行」の政策決定待ちから起きているとは言いがたいものがあり、市場は我々の想像以上に変化を起こしつつあることを強く感じさせられます。
株と債券が相関しはじめている不思議
個人投資家は「トランプ候補」の当選や「地政学リスク」など様々な材料を相場の上下振幅リスクとして認識しようとしていますが、どうもメインの金融市場では米国の利上げが誘発する株式と債券の相関性が現在の資本市場における最大のリスクと見られているようで「FOMC」の結果を前に相場が妙な形で下落しているのは完全にこれに起因しているようです。
これまで株式と「債券」は負の相関性がありましたが、「マイナス金利」や「量的緩和」など「中央銀行」が導入した大規模な刺激策で、市場はますます機能不全の様相を強くしており、特に市場が「中央銀行」の政策によって動くことになったころから、分散投資が完全にワークしなくなっており、株式と債券が同じ方向に動くことを投資家が非常に嫌気して逃げ込む場を失った資金が現金として市場から撤退している理由がここにあるわけです。
奇しくも「リーマン破綻」から丸8年という日柄も投資家に心理的にリスクの再来を感じさせている可能性もありますが、どうも市場全体が何かに身構え始めていることを強く感じます。
Data Bloomberg
為替の世界は投機だけではなく実需がその実態を支えているという現実がありますから、どんなことがあってもそれなりの動きがでることになりますが、株のほうは日銀の会合についても「FOMC」についても期待で上昇しなくなっている理由の多くの部分がこれに起因しているものと思われ、「FOMC」での利上げの影響を受けたり、日銀の緩和の影響を受ける前に投資家が資金を市場から逃がしていることが容易に想像できる状況です。
とくに日本の相場は日銀の過度な「ETF」買いで連日700億強の買いが入っても相場は下落はしないもののほとんど上げもしないというおかしな状況が続くようになっており、21日の政策決定会合を受けてもほとんど動かない可能性もでてきています。
チャート出展 Kabutan
もっとも安全なのは一旦様子見か
そもそも経済・金融イベントというのは常に為替にとっては予想外のリスクが発生しやすくなりますから、多くの賢明な投資家は参加しないという姿勢をとることになりますが、やはり結構動くので参加してみたと感じる個人投資家が多く存在することもまた事実です。
しかしこの秋、とりわけ9月の為替相場では金融市場全体が変調をきたし始めていることがうかがわれるため、これまで以上に慎重な対応が必要になってきているのは間違いありません。
日ごろよりもポジションを少なめに打診的に売買するか、一旦様子見を決め込んで流れが理解できてから参入するといったなんらかの自己防衛策をとる必要がでてきているのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)