6月の英国EU離脱決定を受けて、株も為替も大きく売られて大暴落騒動が巻き起こったのからちょうど3ヶ月が経過しました。
国内ではワイドショーなど経済と関係ないような番組まで、英国が危機的な状況に陥ると大騒ぎをしたものですが、三ヶ月経った今を見ますとプロのエコノミストも含めて超悲観的な見通しだった英国経済は、まだEU離脱の交渉が始まっていないこともあって、ほとんど大きな影響を受けずにここまでやってきていることが確認できます。
市場見通しというのはとにかく極端から極端へと走りがちですが、実は英国のEU離脱も今後交渉が詰まっていかないとそれほど大きな影響が出ずに、むしろ離脱の利便性を利用することができる可能性も出てきている状況にあるのです。
ポンドは大きく下落し安値で推移
6月24日、東京タイムで離脱が正式決定し驚くほどの下落を見せたポンド円ですが、その後比較的幅広いレンジの下のほうで推移するようになっており、このポンド安が思わぬ利益を英国にもたらすようになっています。
もちろん国民の社会生活は、ポンド安から物価の上昇などが具体的に示現するようになっているのは間違いないようですが、株式市場は活性化しており、6月に一旦は大きく下落したFTSEはその後高値圏で推移し、いくら「ETF」を買っても下がらないけれど上がらない日本の株式市場を尻目に、大きく上昇を果たしていることがかなり印象的な状況となっています。
OECDは今年の英国経済は若干成長を予測
経済協力開発機構・OECDが8日に発表した7月の景気先行指数(CLI)によりますと、英国の指数が99.32となり、6月の99.29から小幅ながら上昇し「BREXIT」の影響がまだ出ていないことを示す結果となっています。
「OECD」は今年の英国の成長率を1.7%から1.8%へと引き上げる一方で、2017年は2.0%から1.7%への下方修正を発表しており、不透明感を強調しています。
しかし英国のハモンド財務相は、英国政府が景気の押し上げに必要な施策を有していると協調しており、意外に自信を覗かせています。
その一方でEUのほうは英国に厳しくあたるはずのドイツのメルケル首相率いるCDUが、各地の議会で大きく負け始めており、英国がEU離脱を正式に決定する前にメルケル自身がいなくなりそうな勢いであるのです。
また、2017年フランスの大統領選挙で、かねがね自身が当選すれば「EU離脱をすすめる」と公言している極右のルペン候補が躍進を遂げており、EU自身のほうが英国よりも深刻なリスクに直面しはじめていることから、結果的に英国はEU離脱してよかったという話になりかねない動きが始まっているのです。
逆張り投資で有名なスイスの投資家「マークファーバー」は「BREXIT」当初から英国にとってはEU離脱はいいことであり、大国より小国として生きていくほうがうまくいくしシティは破壊されない。との予測を出しています。
また、国内では人気の投資家である「ラリーウイリアムズ」もEU離脱後、英国はよい方向に進むだろうと予想しており、より多くの経済パートナーとの自由貿易が経済発展につながると考えた場合、英国と欧州との距離は遠くなり、英国と米国の関係は強固になると指摘をしています。
実際にここからこうした予想通りの動きになるのかどうかが注目されるところですが、問題を抱えているのはむしろEUのほうになってきていますから、欧州発の金融危機などが起きた場合、その損失負担を免れることで英国が得をする可能性もあり、一朝一夕にはそのメリットデメリットを語れなくなってきています。
いずれにしてもポンドは戻り売り対象
ただ、為替相場のほうではポンドは引き続き安値で推移する可能性は高く、大きく戻ることはどうやら当面期待できそうもない状況です。
先進各国が挙って自国通貨安を志向している中にあって、さしたる努力もないままにポンド安を実現できた英国にとっては、この上ないメリットを享受できるもので、この流れは続くことになりそうです。
この「BREXIT」のように市場参加者が想定しなかったまさかの事態が現実のものになりますと必要以上に悲観的な見通しが市場を覆いがちです。
しかし、実は現実はそれと異なる動きになることも多く、この秋最大のイベントとなる米国の大統領選挙でもトランプ政権誕生でかなり悲観的な予想がでたとしても現実はそうならない可能性についてもあらかじめシナリオとして想定しておく必要があることを痛感させられます。
(この記事を書いた人:今市太郎)