7日に発表された9月の「米国雇用統計」は、非農業部門の雇用者数の伸びが15万6000人と、8月の16万7000人から鈍化し、市場予想の17万5000人も下回ったことから結局ドル円は下落することとなり、103.200円を維持して週を終えることができませんでした。
就業者数の伸びが鈍化するのは3カ月連続とはなりますが、決して悲観的な数字ではないだけにこれで利上げが遠のいてしまうのかどうかに注目が集まることとなりそうな微妙な状況となっています。
各社予想平均に到達しないことにどれだけの意味があるのか?
この「米国雇用統計」は毎回各社予想の平均との乖離が、よくても悪くても大きくなるのがひとつの特徴となっています。
しかし、既に完全雇用が実現している中にあっては、もともと数字が大きく伸びることを期待するほうが無理な話で、平均して15万人程度の雇用が継続していれば、本来は十分に利上げを行える環境になっていてしかるべきなのですが、なぜか市場は慎重な姿勢を崩しておらず、前日までのドル円の上昇が姿を消して週末を迎えることとなりました。
103円台を維持できなかったドル円
75日線や日足の一目均衡表の雲の上限も突破したドル円ですから、大きく流れが変わったとの認識が高まりましたが、結局「雇用統計」を受けては103.200円レベルも維持できずに越週することとなり、いまひとつ勢いの感じられない終わり方となっています。
ここ数日ドル円が海外市場で買われている大きな理由としては、米国の大手証券が挙って米10年国債が2%を目指すという金利上昇レポートを出しているからで、米10年国債の金利の上昇がかなりのサポートになってきたことは間違いありません。
来週月曜日は日米ともにお休みでることも一旦ポジションを手仕舞う動きに繋がっているものとも思われますが、もともとドル円を大きく買い上げる材料はそれほど多くないだけに、この動きが結果的にだましになるかどうかも慎重に見極めていきたいところです。
月曜日は二回目の大統領選討論会
日曜日(日本時間では月曜日の10時)に開催される第二回目の大統領選討論会では、無作為に選ばれた有権者の質問も受け付けることから、クリントン大統領には健康問題が突きつけられることになるものと思われ、逆転がおきるのかどうかも注目されます。
国外にいる我々が視聴している限り、トランプが優位に見えることはほとんどないので、正直なところ米国民がどのように判断しているのかよくわからない状況であり、相場の動きも選挙の行方を正確には示していない可能性がでてきています。
それだけに蓋を開けたらトランプという番狂わせはまだまだ残されている感じで、決して安心できる状態でないことだけはしっかり認識しておくべき状況といえます。
これで利上げできなければ来年も利上げは遠のく
「リーマンショック」から丸八年を経た米国経済は、暴落の震源地でありながらも、日本経済の「バブル崩壊」からの継続的な金融相場の下落状況から比較すれば株価レベルだけは飛躍的な回復を遂げていることがわかります。
しかし、果たしてこれ以上の回復をここから望めるのかどうかについては個人的にはかなり疑問であり、今の状況で利上げができないとすれば来年以降も利上げは簡単には行えないのではないかという大きな疑問がよぎります。
実際米国が利上げを行わなかったことで、新興国をはじめとする経済はかなり救われているのが現状ですし、リセッションに向けた「金融政策」のひとつとして金利上げて、いざとなれば下落させて武器にしたいという「FRB」の意向もわからなくはありませんが、今本当に無理をして行うべきかどうかについても大きな疑問が残ります。
今年の為替市場では米国の利上げがほぼオールシーズンのネタとして常に話題になっていますが、本来今年4回の利上げを見込んでいた「FRB」の先見の明のなさと「イエレン議長」の優柔不断さにはさすがに飽きができた感が否めません。
とりあえず利上げは米国大統領選以降のお楽しみということになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)