週明けから米FBIのヒラリーメール捜査終結コメントで、いきなり爆上げを示現したドル円ですが、すでに8日はもう投票日ですからここからじたばたしても仕方ない状況にさしかかってきています。
ただ、猛追したといっても依然強い支持率を確保していたヒラリークリントンの状況を加味してなのか、ファンドを中心とする投機筋はドル円を依然下方向で見ている可能性が高まってきており、こうした勢力の考え方についても一応理解しておくことが役にたちそうです。
依然根強い投機筋のドル円ショートのボリューム
「CFTC」が発表した11月1日時点の建玉報告によると、「CME」の通貨先物市場で投機筋のドル円のショートは4万3160枚と前回の4万4595枚から1435枚減少してはいるものの、どうなるかわからない大統領選挙を前にしてもあまりショートの枚数が減少していないことがわかります。
もちろんヒラリーメールの捜査報道がでて、大幅にドル円が下落したことも幸いしているのかもしれませんが、見方によっては10月大幅にドル円、日経平均先物、原油先物の三点セットをせっせと買上げてきた当事者であるたけに、米国大統領選挙でヒラリーが勝利してもそれほどドル円は上昇しないと見ているのには一定の説得力を感じます。
なにより彼らが上方向に買い上げるつもりがないことを暗にほのめかしているようにも見え、なかなか興味深い状況であるともいえます。
12月の米国利上げは一定の折込を完了か
このコラムでは毎度おなじみの「CME」のFedWatchのレートによれば既に12月利上げは66.8%が織り込み済みであり、もはやこのまますんなり利上げをしたとしてもほとんどマーケットは驚かない状況にあるといえます。
つまりこれはここからドル円が大きく上昇しないことを意味しており、投機筋自身が買い上げた結果が105.500円にしかならなかったことを考えれば、もはや大きく上がらないと見ている可能性賀が高いともいえるのです。
ヒラリークリントン勝利でも大幅上伸の見込めないドル円
UBS証券では大統領選挙の勝率の可能性を議会投票結果をからめて、以下のようなシナリオと想定しています。
その具体的なシナリオは、クリントン大統領の下で、民主党が上院、共和党が下院の過半をそれぞれ獲得する可能性が42.5%。次に、クリントン大統領とねじれ議会(共和党が上下両院で過半)の組み合わせが32.6%。そして、トランプ大統領の下で共和党が上下両院の過半を押さえて完勝するシナリオが15%、クリントン民主党の完勝シナリオが10%といった割合になっています。
皆さんご存知のとおりヒラリーがすばらしく支持されて大統領になろうとしているわけではないのですから、ヒラリー勝利でも相場に与える影響は予想以上に低く、しかも圧勝の可能性が低いことがドル円の大きな上昇を投機筋に期待させていない可能性があるというわけです。
また実際に具体的な政策が明確になるのは来年の春先ですから、当面それまでは安全資産にシフトして様子を見る期間が続く可能性があり、トランプが勝ってもヒラリーが勝ってもドル円は大幅上昇しないと見る向きが多いのかも知れません。
もちろん相場に絶対ということはありませんが、よくても年末からと仕上げまでレンジ相場を形成して大きな動きを明確にさせないことは十分に考えられる状況になってきています。
大きな下げは底で買い、上昇相場はピークで戻り売りが基本
大統領選挙と議会選挙を絡めた結果は、とにかくあと2日ほどで決着がつきますから今ここでその予想をこれ以上してみても意味はありませんが、ドル円に限っていえば大きく下げたらとにかく一度は拾ってみるのが基本になりそうです。
とくに100円を切って95円方向に沈み込んだ場合には、少なくとも100円までは戻る可能性があると考えていいでしょう。また上昇した場合でも今の材料から110円を大きく越えることは考えにくく、最大でも107円レベルに達したところでは一度売ってみるのが利益チャンスとなりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)