分析会社であるノバス・パートナーズが分析した流動性に関する結果がかなり危機的な状況であることがわかりました。
これは多数の「ヘッジファンド」が同じ銘柄を一斉に売ろうとした場合に、市場がそれをどの程度容易に吸収できるかを分析したもので、ヘッジファンドが好む銘柄の売買高を基に算出した「流動性」指数は過去最低であることが判明しています。
ボラティリティがほぼ消滅し「S&P500」種株価指数が過去最高付近にある足もとの市場で、この分析結果はセンチメントが突然悪化した場合のリスクの大きさを示唆しているといえます。
実際に過去1年半で市場の「流動性」が低かった時には「ヘッジファンド」が選好する銘柄が相場を先導して下落を加速させたために相場全体の下落が増幅されたといいます。
つまり流動性パニックが米国市場でもうそこまでやってこようとしていることを示唆しているわけです。
ノバス・パートナーが開示した危険シグナル 出展ブルームバーグ
ヘッジファンドの売り集中が相場を大きく崩す危険性
流動性パニックなどという言葉を使うとどういうことが起きるのかぴんとこない感じですが、ノバスの説明によれば、「ヘッジファンド」が何かに怯え、いきなり保有銘柄を売り始めた場合、特定の領域だけが桁外れに売り込まれる場面が登場することになり、特定銘柄だけが理由もはっきりしないまま2割から4割といった形で下落しはじめると、個人投資家をはじめとするほかの投資家にも恐怖感が広がって売りが売りを呼び相場が瓦解するという構造です。
足もとでは、単純なトランプ政策期待ということでNYダウの相場が走り始めていますが、これがどこかの瞬間で逆回転をはじめ、売りが一点に集中して売るに売れないといった危機的状況が置き始めると一気に相場が崩れて偉いことになりそうだというリスクをこの分析会社は暗にほのめかしているといえます。
下げないが上げもしなくなった日銀の管理相場~日経平均も危険
我々国内の個人投資家が心配しなくてはならないのは「日経平均」の存在です。
日銀が「ETF」買いを始めてから、日経平均は下落すれば日銀が買い支えてくれるだろうという安易な投資家期待からどんな損場状況でもほとんど大きな押しというものが存在しなくなってしまいましたが、その一方で押しがないから大幅な上昇もなくなってしまい、これまで相場が自らもっていた季節循環といったものが全くみられなくなってしまいました。
今の停滞相場にはいろいろな理由がつけられていますが、とどのつまりは日銀による過度な管理相場が作り出している弊害が顕在化してきていることがよくわかります。
しかもこうした管理相場でもこのノバスが指摘するように特定領域、銘柄で売りが集中しても流動性が確保されないことになると、いわゆる流動性パニックが引き起こされて相場がガタガタに下落する可能性があるわけで、米国株式市場にこうした流れの火がつくことになれば日本の株式市場にも同様のリスクが広がることになるのは容易に想像できる状況です。
現状の国内株式市場は米国市場の影響が半分と為替の影響が半分で、自助努力で上昇する余地がほとんど見られず期末決算も近いのに毎日閑散相場が続いています。
市場では東芝が相場の足を引っ張っているといった指摘も強く見られますが、海であるにも係わらず潮の満ち引きがなくなってしまったかのような相場状況の後にやってくるのが何なのか非常に気になるところです。
為替市場もほとんど大きく動かない状態に陥っていますが、株式市場が大きく下落すれば巻き込まれるのは間違いなく、なんとも妙な静寂が継続中です。
相場の膠着の果てに何が飛び出してくることになるのか、かなり慎重に見極めていくべき時期にさしかかってきているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)