8日に発表された企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスが発表した2月の全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は29万8000人増と、市場予想の19万人増を大幅に上回ったことからドル円は上伸し、114円台後半まで上昇する動きとなりました。
しかしながら今回も115円を越えるところまでは至っておらず、2月15日につけた114.95円にも届かず反落しています。いよいよ10日には「米国雇用統計」が発表となりますが、この数字がよければ3月15日の「FOMC」での利上げを正式に追認する形となりますので、その後のドル円の動きが気になるところです。
完全雇用が既に実現し、冬場という季節要因があるにも係わらずこれだけ強い数字がでたのは正直驚きで、「雇用統計」もそれなりの良好は数字が出る可能性が高まっていますが、為替相場に振り替えて考えてみたときには、果たしてドル円の大幅上昇の支援材料になるのかどうかを見極めることが重要になりそうです。
115円台に接近すると急にブレーキがかかるドル円
3月15日の「FOMC」での0.25%の利上げに関しては既に市場の90%以上が織り込み済みという状況ですから、もはや利上げは行われないことのほうがサプライズになりそうな勢いですが、今週末の「雇用統計」はその利上げを正式に追認する材料となりそうで、よほど驚くほど悪い数字がでれば別ですがそれなりの数字が出ればドル円が大きく下落することはなさそうです。
ADPと「雇用統計」とは乖離することもあるため今月の「雇用統計」数字がいいものになるかどうかはまだわかりませんが、果たしてこの結果でドル円が115円に乗せられるのかどうかが大きな注目点となりそうです。
ドル円の1時間足のチャートを見ますと先週4日の日本時間の3時に開催された「イエレン議長」の講演のときの高値となった114.75円レベルに面あわせはしたものの、今回も114.95円やその上の115円には届いておらず、ここから先売り物やオプションなどかなりの障害物が115円に向けて並んでいることがわかります。
果たして今週末の「雇用統計」でどこまで値を伸ばすことができるかがポイントとなりそうですが、相場が個人投資家の期待と異なる動きをすることも想定しておく必要がありそうです。
投機筋の絶好の売り場を提供しかねない115円台
明日の「雇用統計」の発表時にドル円がどのレベルの発射台にあるのかが1つ気になるところですが、114円台前半が維持できているとすれば、NFPの数字がよくて吹き上がることは十分に想定される状況です。
それが115円台に到達するのか115円前で跳ね返されるかは結果が出てみないと判りませんが、このタイミングで吹き上げた場合にはすでに利上げ完全織り込みとなることから、3月15日の利上げアナウンスを受けてさらに相場がこの材料で上昇するとは思えず、
ここまで無理やり買い上げてきたと思われる投機筋が15日を待たずに先に利益確定売りを出して下げる可能性すらありそうで、順張りでついていくのには注意が必要となりそうです。
ここのところ「雇用統計」プレーでは数字がよくて吹き上げても週明けには落ちてきてしまうのが「アノマリー」のようになってきていますので、仮に115円に届くほど吹き上がっても翌週に向けての絶好の売り場になってしまうリスクは意識しておく必要がありそうです。
NYダウは「FOMC」での3月利上げが確定的な状況になって以来利益確定売りなどのも押されて連日下落が続いていますが、2万1000ドルを超えたところからの下落としてはその幅は小さく、意外に利上げの影響がでていない状況です。
これが果たして正式利上げで同動くかも注目されるところで、最近の事実がでてからやっと織り込みはじめる不思議な相場状況を考えますと意外に結果を見て相場が大きく嫌気する可能性もありそうです。
ドル円が115円を乗り越えていくためには、既に金利以外の材料が必要になってきているように見える相場です。
(この記事を書いた人:今市太郎)