米労働省が発表した4月の「米雇用統計」は、非農業部門雇用者数が21万1000人増加し、伸びは市場予想の18万5000人増を上回るとともに、前月の7万9000人増から大幅に増加することになりました。
失業率も約10年ぶりの水準となる4.4%に低下し、平均時給は伸びなかったものの、数値的には6月の追加利上げを大きく否定するものとはならずに済んだ形です。
しかし結果を受けたドル円相場は112.670円レベルまでしか瞬間的には上昇せず、その後も高値は1152.760円にとどまるなど、ほとんど「雇用統計」に買いで反応しないままNYタイムを終えています。
ほとんど動かなかったドル円
本邦個人投資家の殆どはドル円を見ながら「雇用統計」の結果を窺うことになったと思いますが、残念ながら数字は良好であったにも係わらず初動に「アルゴリズム」が反応しただけで後はチャートが壊れたかのような無風状態が続くこととなりました。
これはドル円だけ見ていると非常に不可解な動きとなったわけですが、実はユーロドルやポンドドルを見ますとかなり異なる動きをしていることがわかります。
雇用統計に参加する妙味が薄れている
ここ10年以上、米国の「雇用統計」は為替村の村祭り的な色彩があり、結果を受けて一時はドル円で2円近く動くといったことを目にするケースが多かったわけですが、直近の「雇用統計」はそうした妙味が薄れており、先月も数字は悪くても一瞬下がったところから大きく買い上げられたり、上昇しても翌週には下がるなど、あまり明確な動きにならなくなっているところが気になります。
この3つのチャートを見比べてみますと一番動きが乏しいのがドル円で、ユーロドルは発表直後に上伸したまま横ばいを続け、ポンドドルが一環して上昇を続けたことがわかります。
つまりドル円は足元ではテーマの通貨にはなっていないということで、ユーロとポンドに翻弄されて殆ど動かなかったというのが正直なところではないかと思います。
FOMCの判断材料としてもいいところだけ使われている
「雇用統計」の結果はこれまで「FOMC」の政策判断に大きな影響を与えるとされてきましたが、すでに完全雇用が実現している中にあっては、驚くほどいい数字が出るはずも泣く、逆にいい数字が出たところだけ適当に利用されている気配濃厚で、もはや為替の売買手がかりにはなりにくくなってきていることがわかります。
また平均時給が予想より高い安いという話もまことしやかに出回っていますが、そもそもオバマケアの実施の影響で非正規雇用が非常に増えている米国ではもともとの時給が低いのが根本的な問題で0.1パーセントレベル増えた、減ったなどというのは誤差範囲の話にすぎないところも気になります。
こうして見てきますと、「雇用統計」を狙って売買をするというのも、殆ど意味のないことになってきており、もはや積極的に参加するイベントではなくなりつつあることがわかります。
今回のゴールデンウイーク期間は結局投機筋の下攻めもなく、逆にむりやり113円を付けに行く動きが出ましたが、予想外の動きとなったのは5日の東京タイムに原油の先物価格が大きく下落し、クロス円が悉く下げたことに引きずられる形でドル円もあわや112円を割り込むのではないかといった下げを見せたことです。
この動きには俄かロングもそれなりに投げさせられてしまったようで、どうもこの動きからドル円の上伸が止められてしまった感があります。
週明けにはフランスの大統領選挙の結果が判明しますが、今のところ大きなサプライズはなさそうな雰囲気で本格的な5月相場でドル円が113円台を駆け上ることができるかどうかに注目が集まります。
米債の利回りの推移から見てもドル円はかなり底堅い動きを継続しそうで、果たしてどこまで値をあげられるのかも大きな焦点になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)