ドル円は米国の指標悪化をきっかけに、とうとう明確に112円台を割り込み111円台で週末を迎える結果となりました。
北の脅威の問題も上値を重くしているとはいえますが、どうやら本質的にドル円は上方向へ上がるのがかなり難しくなっており、9月単月で7円近く上昇した分の値幅と日柄の調整段階に入ってきているようです。
今週はぎりぎり200日移動平均線よりも上の価格でお仕舞になっていますが、10月後半は111円台前半まで下押ししてこのあたりをうろうろする可能性がではじめてきています。
CFTCが13日発表した9日時点の建玉報告によると、「CME」の通貨先物市場で投機筋のドル円のロングは「10万1419枚」と前回の「8万4643枚」から「1万6776枚増加」
また、ユーロドルのロングは「9万8079枚」と前回の「9万833枚」から「7246枚増加」ということで、ユーロドルは明確に再上昇の局面にあるようですが、ドル円は停滞しても投機筋はロングを積み上げて手放さない相場が続いているようです。
また、株価のほうは米国が絶好調で株と為替の連動感はまったく乏しい状況が続いています。
ノーベル経済学賞受賞教授に理解不能と言わしめた足元相場
phot:Bloomberg
ところで、今年のノーベル経済学賞受賞教授である「リチャード・セイラー氏」がブルームバーグTVの電話インタビューに応え、「われわれは人生で最も危険な時期にあると思われるが、株式市場は油断している様子だ。私には理解できないことを認める」と語り、市場で非常に大きな話題になっています。
しかし米系ファンド勢は日足でも週足でも完全にトレンドが出てボリンジャーバンドの+2σの外側で推移する米国の株式状況にはかなり自信をもっているよう、この末期的なバブル相場はまだまだ続きそうな気配が強くなっています。
セイラー教授の指摘するように、本当にできるかどうかわからないトランプ減税や「ドッドフランク法」の廃止などに異常に期待が集まりすぎいというのは確かにそのとおりの状況で、単なるセンチメントとは言えここまで強気に相場が推移するのは明らかにバブル末期の兆候であることは間違いないことから、市場に精通する人間であればあるほどリスクを感じるのは無理もない状況になりつつあります。
どうもこうなると年末にむけてのトランプ政策が、期待どおりになればそのままバブル継続となるのでしょうが、これが期待から乖離しはじめるとそれがきっかけで相場が大きく暴落する可能性もでてきており、どこまでこの相場についていくのかもある程度覚悟を決めなくてはならなくなってきているようです。
国内の日経平均も総選挙相場で走っていますが、9月からの上げではかなりいいところまで上昇しており、さらなる上伸は選挙後になる可能性もあることからこちらも注意が必要です。
ドル円はこうしたバブル相場についていっていないのが不幸中の幸いともいえる状況で、10月の残り半月はこうした状況のひとつひとつがどのように決着するのかを見極めながら年末相場の方向を探ることになりそうです。
マネーショートにも登場したセイラー教授
ところでその昔このFXコラムでもご紹介しましたが、マイケルルイスの小説を映画化した「マネーショート」にもこのセイラー教授が登場して、わかりにくい商品の構築構造について解説をしていたことが話題になっていま。
サブプライムローン破綻の詳細にも詳しいセイラー教授をしてわけがわからなんと言わしめている足元の株式市場の爆騰状態は、とりあえずまだこの秋続くのかもしれませんが、個人的には安易についていくのがどうも憚られる状況になってきています。
市場参加者全員がまだいけると思い始める段階が、実はバブルでは崩壊時期にさしかかっていることを示すだけに、この最終局面がどこで終わるのかを見抜くのは相当難しいものがあります。
ドル円相場はほとんど膠着した一週間でしたが、相場自体は相当悩ましい時期にさしかかってきており、これまで以上に週明けからの相場には注意が必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)