物価を安定させるために多くの国の中央銀行は物価上昇率に対する目標値を掲げています。
たとえば米国では2%が目標になっていますし、日本ではデフレ対策を行うということで量的金融緩和をスタートさせたときから名目物価目標を2%に設定しています。
ただ、この物価目標をどのようにクリアしていくかが各国ともに大きな問題になってきており、目標だけたてても何も役に立たない国も多くなってきているのです。
グローバルデフレの中で先進国は目標達成できない
資本主義社会が高度に成熟した先進国では、人口の増加もはかられず、多くの国が高齢化と人口減少に直面するようになっていることから、消費は限界に来ており、新たな商品でもどうしても買わなくてはならないものが限られていることから世界レベルでデフレ傾向に陥ることが多くなってきています。
これは特定の新興国以外は非常に似た状況になっており、日本は確実にデフレを経験していますが、ユーロ圏もそれにきわめて近いところを彷徨っているのが現状です。
米国は世界で唯一自国だけで生産と消費ができる国であるといわれていますが、やはり大きくインフレに傾くことはなくなっており、物価目標は日本と同様に簡単には達成できなくなっています。
2015年は原油価格がまさかの暴落となり、多くの国で資源輸入コストが大幅に減少してしまったことが起因してデフレ傾向が強まる状況となっています。
本来資源の輸入コストが下がるわけですから喜ばしいはずなのにも関わらず原油価格の下落がデフレに拍車をかけることとなってしまうという事態にも直面しています。
異常な金融緩和はハイパーインフレへとシフトするリスクも
日本の場合2013年から始まった量的質的金融緩和の実施により当初は2年経過した段階で名目物価2%上昇を達成するはずでしたが、いまだにこのターゲットをクリアできずに、目標自体を見直すことを含めて緩和措置を検証しなおすことになりましたが、そのぐらいデフレを克服することは難しい状況になってきているのです。
ただし、日本の場合は過去3年に及ぶ量的金融緩和によりマネタリーベースが異常に膨れ上がり、このままで行けば来年にはGDPを超える金額にまで拡大することから、デフレとは逆に制御できないインフレがやってくることも危惧されはじめています。
特に景気もよくないのに物価だけ上昇させようとする試みはスタグフレーションに陥る可能性が高く、中央銀行では制御できないハイパーインフレを引き起こすリスクも指摘されはじめています。
人類の経済学史上量的金融緩和で完全にデフレが克服できたケースはまだ正式には認められておらず、日本の量的金融緩和はある意味でぶっつけ本番の実証実験を行っている状況に近いものになってしまっています。