ビルトインスタビライザーは、「自動安定化装置」と訳されます。自動的に景気を安定方向に向かわせられる制度などを意味しています。
所得税の累進課税制度が代表例
ビルトインスタビライザーの代表例としては、所得税における累進課税制度が挙げられます。累進課税制度とは、所得が高い人ほど、課税される際の税率が高くなる仕組みです。この仕組みでは、毎年の所得に応じて税率が決まります。
個人ごとに税率が毎年決まっているわけではないので、同じ人でも所得が少なくなれば、税率は低くなります。その結果、収入が少なくなったときには税率が下がり、税金負担が減ることで消費に回せる金額を一定程度確保できます。
個人にとって収支のバランスをとりやすくなるほか、国としても、景気が悪くなったときに自動的に国民が使えるお金の割合を増やすことができます。
もし累進税率がなければ、景気が悪くなったときに国民が使えるお金が現在よりも少なくなり、より多くの財政出動を伴った景気対策が求められてしまいます。ビルトインスタビライザーが政府の景気対策を一部、自動的に行っているといえます。
過度な期待は禁物
自動的に景気を調整してくれるビルトインスタビライザーですが、過度な期待をすることは望ましくありません。
というのも、ビルトインスタビライザーを信頼しすぎると、不況時の景気対策が不十分になったり、好況時にバブルを引き起こしてしまったりする可能性があるからです。
景気対策を実施するためには、補正予算の作成などを行う場合があり、一定の時間がかかります。この間に不況や好況が行きすぎないために活躍してくれる存在くらいに考えておくことが求められます。