5月14日米国トランプ大統領はFOXビジネスニュースのインタビューで「強いドルを持つ好機だ。われわれがドルの強さを維持したため、誰もがドルを持ちたがっている」と発言し市場を驚かせています。
これまでドル高を一貫してけん制してきたトランプが、いきなりドル高容認・支持を口にした背景には何があるのかについて憶測が飛び交いはじめています。
この話はFOXビジネスのインタビューの中に飛び出してきたものです。
為替についてだけ取り立ててトランプがツイートしたといったようなこれまでの流れとは異なる部分がありますが、ドル高は米国の輸出競争力を低下させる大きな要因です。
膨らみに膨らんだ政権の債務を減らすという意味でもドル安にもっていくことのほうが、断然うまみのあるものだけになぜ強いドルを支持することになったのかはよくわからないところがあります。
また不動産業を長年営んでいるトランプにとっては、ドル安のほうが色々な意味で都合がいいのもまた事実で、そうしてこのタイミングにドル高支持なのかは今一つ釈然としない状況です。
もっとも中国との断交さえちらつかせて脅かす人物ですから、一時的な発言に過ぎない可能性もありここからの追加発言が注目されるところです。
単なる自己成果の強調か
ご存知のとおり3月の新型コロナ暴落後、FRBはこれまでにない規模の緩和に即座に動き、市中には驚くほどのドル資金が流通することとなってしまいました。
本来ならこれだけドルが市中にバラまかれればインフレになりがちですし、そもそもドル安は相当進行するものです。
市場はリスクオフになると債券を購入するよりもドルキャッシュを確保するという動きにでることから、ドル円でもリスクオフになるとドル高が明確に示現する様になってきています。
トランプにとってはドル買いが維持されるという状況は、強い米国があるからという自画自賛がこのような発言に繫がっている可能性は高そうです。
ただ、すでに日本円にして2500兆円を超し始めた政権の債務は、ドル安にして減らしていく以外には伝統的に解消の道がないのもまた事実です。
大統領選挙までの時限的に発言でどこかでいきなりドル安推進に反転させる可能性も十分に残されているようです。
マイナス金利実現ならドルはドル安必至
トランプ発言でドル高支持や容認と親和性が低いのが「マイナス金利」をしきりにFRBにすすめようとしていることです。
パウエル議長は、マイナス金利の実施は否定しているもののPPTの一員でもあることからこれまで結果的にトランプ発言に従うような動きをしていますから、ゼロ金利についてはごく近い将来実現するものと思われます。
こうなるとここ2年前までは主要国で、唯一金利がつく通貨だったドル円はほかの主要通貨との向き合い上もドル高にはならない可能性が高く、利下げとドル高とが両方実現することは極めて難しいことになります。
こうして考えますとトランプの今回のドル高発言はかなり現象的に気分で口にした可能性も相当ありそうで、FRBの政策だけから考えてもドルが一方的に高くなるということは想像しにくい状況です。
足元では海外勢が米国の長期債をかなり積極的に売り始めており、強いドルの先に米債外がついてきているわけではない点も気になるところです。
金融市場では依然として一部の銘柄を中心とした米株買いが進んでいますが、どこかで二番底もしくは大底を狙った反転売りが加速するリスクは十分に残っている状況です。
3月から見られているようなリスクオフでドル買い、ドル円の上昇というものがここから状態的に続くことになるのかどうかも今後の動きからチェックしていく必要がありそうです。