悪化する経済指標をもろともせずに上昇を維持している米国の株価指数ですが、実はアナログチャートモデルを使って分析してみますと、ここから先に起こりそうなことが朧気ながらにも見えてくる状況です。
そもそもこのアナログチャート分析手法というのは、チューダーファンドに副社長として在籍していた「ピーターボリッシュ」なる人物が開発したものです。
ちなみに、チューダーファンドとは、エリオット波動分析による転換点売買で、ブラックマンデーで大儲けをした「ポールチューダージョーンズ」が開設したファンドになります。
まさにチャートの形状の類似点から先行きを占うという、足元でAIがしきりにやっていることの先駆け的分析手法といえるのです。
これによると足元のNYダウの動きは、あきらかに1929年からの大恐慌の暴落チャートに類似していることがわかります。
1929年の大恐慌よりも相場のスピードが3倍近く早い
Zerohedgeに掲載された1929年からのダウのチャートとそれをトレースするように動き始めている今回の暴落相場とを比較してみますと、たしかに形状は非常に似ています。
しかも、暴落の値幅と日柄の推移は明らかに29年のそれよりも大きくかつ速く展開していることがわかります。
1929年は暴落後、半年かけて半値以上戻ったところでまた下落に転じています。
一方、今回は2か月しないところですでにNYダウは2万5000ドルに接近しようとしており、明らかにそのスピードが3倍近い速さで動いているのです。
今回の暴落が1929年と同じように推移するかどうかは判りませんが、2万5000ドルをピークにした場合には再度下落は十分に考えられる状況です。
しかもそのタイミングが1929年のときよりも3倍速となった場合には、6月にすでに反転下落する可能性すらでてきているわけです。
もちろん29年からの動きどおりに得下落するかどうかなどまったくわかりませんが、一つの仮説として意識しておきたいところです。
終末博士は米株のV字回復に否定的
2008年のリーマンショックをずばり事前予想して的中させたことで知名度が上がったニューヨーク大学の「ルービニ教授」はあまりにもネガティブな予想を繰り出すことから「終末博士」の異名を持っています。
同教授も足元の米株相場がV字回復をすっかり織り込もうとしている点に相当大きな違和感を持っていると言います。
まずFRBによってむりやり作り出された、史上最大の緩和により流動性は確保されているものの、これも長くは続かないと見ているようです。
足もとの相場では一体誰が株を買っているのかが気になるところです。
一部の投資ファンドが上昇に賭けているという動きをしているのに加え、米国内のミレニアル世代が株の暴落と同時に証券会社に口座を開設してかなりの数の人間が買い向かっていると言われ、新型コロナの収入や先行きへの不安が株式投資に向かわせていることが見えてきます。
米国企業の自社株買いもかなり相場を支えているようですが、すでにこの段階で今年の自社株買いの半数を消化していると言われていますから、ここから株価を押し上げる材料になるかどうかは微妙な状況です。
いまのところ米株は取引額がピークの6割程度で決して活況を呈しているわけではありませんから、ここでご紹介したアナログモデルが正しいとなれば意外に早い時期に相場が反転下落するリスクも常に視野に入れておくべき状況のようです。
とにかく実態景気の悪化にもかかわらずどんどん上昇する相場に違和感を持つトレーダーは増えていますが、相場がそのように動く以上ついていかざるを得ないと考えている方が多いのもまた事実です。
ここでどう判断するかが今年の投資の成果を左右する結構大きな判断になるのではないでしょうか。いずれにしても細心の注意を払いながらトレードしていきたいところです。