主要国の株式市場は3月の大幅下落からかなり買い戻され、さすがに新高値をつけに行くような動きは見せていませんが、マクロ的に見れば妙に底値の堅い推移をしています。
しかしこの状況下で市場が全く織り込めていないのが新興国市場の崩壊リスクです。
すでにこのコラムではトルコリラが危ないので買い向かわないほうがいいというお話はしていますが、もはや通貨取引だけの問題ではなく新興国全体が大きなリスクに直面していることを正確に認識する必要がでてきています。
国、企業双方に顕在化するデフォルトリスク
足もとでは新興国からの資金流出が猛烈な勢いでさらにそれが加速しようとしています。
4月末までの新興国からの対外マネーの流出は日本円にして11兆円、コロナ禍でリスクを察知した資本が一目散で資金を引き揚げていることが判ります。
過去にも大きな相場の暴落があるたびに新興国から資金が逃げ出していますが、今回ばかりはその勢いはすさまじいものがあり、2008年のリーマンショックと比較してもほぼ4倍程度の勢いで資金が逃げていることがわかります。
これを見ると市場でドルの調達が激増した理由の一端に、このような動きがあったことが透けて見える状況です。
今回の資金の流出は、とにかく新興国に投入されたあらゆる領域に広がっており、まず株式や債券からが売られるとともに通貨、ローン、貿易といったほぼすべてで売りが進んでいます。
とくに自国通貨安によりドル建てで発行した債券、債務は非常に負担が大きくなるのは必至の状況で新興国自体も、また新興国企業もデフォルトなどかなり厳しいリスクに直面し始めていることがわかります。
新興国は自国通貨買い防衛で外貨準備を大きく減らしている
ここのところのトルコの動きを見ていると顕著ですが、政策金利を下げても意外に通貨は下落していません。
これは政府が外貨準備を大きく取り崩して、自ら通貨買いをして防衛をしているからで、どこかでこうした資金が枯渇すれば大きく下落する状況が待っているのはもはや明らかな状態です。
買い支えているから落ちないとはいうものの、ここまでの状況でも、
・ブラジルレアル:-27%
・南アランドが:-25%
・トルコリラが:-15%
・メキシコペソが:-23%
程度の下落を示現していますから、まず通貨として買い向かうこと自体が大きなリスクになっていることがわかります。
特に国内では南アランド、トルコリラ、メキシコペソの取引を行うスワップ狙いのトレーダーが非常に多くなっていますから、なにかをきっかけにして相場が大きく下落すれば流動性が枯渇しパニック売りからさらに相場が下落する危険性が高くなります。
端的に申し上げれば、こうした新興国通貨を買い向かう取引はとにかく一旦すべてやめたほうがいいのが今の状況といえます。
多くの個人投資家はここが押し目と錯覚して買い向かったり、ナンピンで購入量を増やす動きをしているようですが、残念ながら今はそういうタイミングではないことをしっかり認識しなくてはなりません。
新興国のコロナリスクは医療体制の不備などを含めてリアルの経済や社会にも相当な影響を及ぼしそうな勢いであり、新興国発で相場が暴落するといったまさかの事態も引き起こしかねないところにあります。
2月からの相場を見ていますとAIやアルゴが席捲しているせいか、本当に大きなリスクが目の前に顕在化してはじめて相場が暴落に転じるという非常に特異な動きを見せています。
どこかで新興国リスクの問題が大きく注目される状況が、為替にも深刻な影響を与えることになるのが非常に危惧されるところです。
下手をすれば5月にもそうした事態に陥ることが考えられますので、油断せずにいまからリスクを避ける動きをしておくべきでしょう。とにかく十分ご注意ください。