1929年の大恐慌が「どんな時代だったのか」ということについては前回のコラムにも書かせていただきました。
GDPがどれだけ縮減するのかは実際に時が経過してみないと正確には判らないものの、一つだけはっきりしているのは失業者が大量発生し身動きが取れなくなる世の中で経済が活性化し、大きく成長することなどまったくないということです。
今週8日は4月のNFPが発表されますが、マイナス2000万人などという劇的に悪化した数字が飛び出すことになるのはもはや間違いなさそうです。
6週間ほど前までは5%を切るという画期的ともいえる完全失業率を維持してきた米国経済は、あっという間に15%超、最終的には失業者5000万人近くになり失業率は30%を超えるのではないかといった悲観的な見方が現実になろうとしています。
本邦でも3割の労働者がコロナ収束でも元の仕事に戻れない可能性
国内では失業者というのは社会保険を収めて失業し、その給付を受けられるレベルの人の総数です。
万年フリーターや個人事業主、商店主、パートなどの人たちで仕事を失ったり、時短で収入が激減した人の総数を損失収入金額などはまったくカウントされていないのが実情ですが、ある調査機関の予測ではそうした統計上にでてくる失業者だけでも短期に「77万人」程度が出現するとされています。
6700万人超の国内労働人口のうち小売、卸売り、サービス業などで既に事業がうまくいかなくなっている業態に従事している人たちの総数を見ますと、少なくとも2000万人以上はコロナが収束しても元の仕事に戻ることはできず。
ほかの産業に労働移動を余儀なくされることはどうやら間違いなさそうで、そのすべてが他の産業にすんなり収容されるとは到底思えないわけですから、当面国内も猛烈な失業社会が到来するのは避けられない状況です。
個人消費を支えるのはまさに国民の可処分所得
国内のGDPは既に6割以上が個人消費によって形成されています。
個別の国内労働者の収入が激減したり途絶えてしまったりすれば、当然消費が著しく低迷し、結果としてのGDPが猛烈に縮減するのは数値情報が開示される以前に十分に想像できるものがあります。
ここから6月以降景気は絶不調で戦後にこの国が経験したことのないほど厳しい状況がやってくることは間違いないわけです。
企業の将来の収益、成長に対する現在価値として表れる個別の株価が足もとや先行きの経済状態の壊滅的な状況を前にしてどんどん上昇する、あるいは株式市場がここから2万円を超えて大幅上昇し高値を更新すると考えるのはあまりにも不自然なものがあります。
もちろんAIやアルゴリズムが相場をかく乱していますから一時的にそうした上昇を示現する可能性は否定できませんが、我々が直面している経済状況はそんな楽観論を一切受け付けないほどひどいものになることは避けられません。
相場は上昇を予想する人と下落を予想する人が存在するからこそ動くもので、どう先行きを予想しても自由ですが、ここから楽観論が延々と相場を支配していくことはまともに考えればあり得ないところにさしかかっています。
過去のケースを見ていますと、妙に強気派が多くなり下落を押し目と決め込んで買い向かうと、実はさらに底がやってきて市場参加者がすべて投げ売りをして「底値をつけたところが本当の底」という結果をみるのが殆どです。
なぜかこうした結果は暴落相場ではかなり普遍的なものになっていることがわかります。いまどきのトレーダーは過去の相場の動きを全く顧みないようですが、実はそこに多くのヒントがあることをこの時期に改めて認識しておくべきではないでしょうか。