3月大きな暴落から上昇へ取って返し行ってこいの相場を示現したドル円中心のFX市場ですが、久々に本邦の個人投資家が多く参入しこの月の本邦FX市場は大きく取引量を伸ばしたようで、3月単月は過去最高の取引額となった模様です。
一般法人金融先物取引業協会が発表した3月度の取引量は以下のとおりです。
・報告会員数:53社
・出来高:10,156,123億円
・2020年3月31日
・売建玉:21,846億円
・買建玉:34,560億円
・建玉合計:56,406億円
リモートワークなどがプラスに働いている可能性
ちょうど新型ウイルスの感染が拡大し、リモートワークや自宅待機になるサラリーマンなどの労働者が空いた時間にFX取引に乗り出し始めたのは間違いなさそうです。
新規の取引者なのか一旦市場から退場した人が再参入したのかははっきりしませんが、3月相場は大きく下げて、また大きく戻るといったかなりボラティリティのある時間帯になったことから新規に参入してカネを稼ごうと思った向きが相当多かったようです。
実はこうした動きは株式市場にも明確に現れており、ネット証券の口座開設も爆発的に増えているといいます。
しかし追証が払えない投資家は3月1.5億レベルに上昇
まあこれで多くの新規参入者、出戻り参入者がトレードでしっかり儲けられたのであれば結構なことですが、金融先物取引業協会が同時に発表している3月の追証発生による未収金の金額もかなり大きなものになっており、必ずしも参加者がみんな儲かっているわけではないことが見えてきます。
上の表が3月の未収金発生件数になります。
ドル円で東京タイムに105円台から101円台に下落するフラッシュクラッシュのようなものはありましたが、2019年正月3日のようにほぼすべての業者が値飛びを起こして強制ロスカットすらも履行されなかったのに比べればかなりましではなかったのかと思っていたものの、結果は結構な件数で個人投資家で1617件、金額は合計すると1億4500万円強ですから相当な金額の未収金が出ていることがわかります。
これは未収金ですから、追証を払った人、さらに証拠金をすべて失った人の金額を合計すれば決して少ないものではないはずです。
果たして新規に参入した個人投資家がビギナーズラックで利益を確保できたのか、あるいは証拠金をしっかり維持できて4月の相場に生き残ることができているのかどうかがかなり気になるところです。
足もとの相場は皆さまご案内の通りであらゆる通貨ペアが動かない状況になっており、取引量も相当減っていますので、リモート勤務で時間のあるサラリーマンなどが本当に引き続き取引を行っているのかもう一つ良く判らないところもあります。
足もとが絶好の金融投資機会とは全く思えない
3月に比べますと、確かに4月のFX相場はかなりボラティリティが下がり落ち着いたレンジの動きを続けていますが、今回のコロナ禍の相場では3月の市場の大幅下落一発だけで暴落が終わったとは言えない状況です。
株式市場ではいい押し目という見方から我先に株を買い向かう個人投資家が増えています。
しかし実態経済の驚くほどの悪化状態を思うと株高はかなり違和感のあるもので、リーマンショックの時でも株価自体が元に戻るまでには2年、さらに昔の1929年の大恐慌の時には3年かかっています。
今の米株の半値戻し相場とそれに追随するようにみえる日経平均の2万円台への戻りを試しそうに見える相場は、決して安心して買い向かえるようなものではなく、為替も含めてさらに大底を探りにいく展開を想定せざるを得ない状況にあります。
多くの個人投資家は減少した収入を補おうとしているのかも知れませんが、かえって大きな損失を食らってとんでもない銭失いにならないことをくれぐれもご注意いただきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)