気が早いもので金融市場は米国の株価が結構戻してきていることなどから、新型コロナ以降の市場を気にする動きもみられています。
まだ感染者数も収束しておらず、米国は世界最大の感染死者数を示現しているわけですから、実態経済はまったくポスト新型コロナなどを気にする状況ではありませんが、気の早い金融市場だけにそうした動きが見られるようになってきているようです。
しかし今回の新型コロナの感染騒動は我々が考えている以上にはるかに実態経済に悪影響を及ぼしていますから、株価の戻りのように社会が復元するとは思えないところに差し掛かっているのがなんとも気になるところです。
これからいよいよ悪いハードデータが続々登場
FRBが過剰とも思える緩和策やジャンク債の買い入れなどおよそモラルハザードにしかなりかねないような禁じ手を次々繰り出していることから、NYダウは底からかなり回復した感があります。
しかし、実態経済はそんなに簡単に元に戻るような世界ではなく、株価とリアルな経済の間にかなりの乖離がではじめています。
Data Tradingview
ここのところ景気の先行指標しか出てきていないので実態経済の悪化状況が正確には認識されていませんが、まず米国を中心に失業率は猛烈に上昇し始めています。
また、OPECプラスで日量1000万バレルの減産が決まった原油は、実際の市場では日量ベースで既に3000万バレルに匹敵する需要が失われており、この程度の減産では全く焼石に水の状態になっていると言われています。
実際に主要国ではガソリンに対する需要が驚くほど減少しているようで、いよいよ消費の落込みが具体的にハードデータに出てくる時間帯がこれからやってくることになります。
物販、サービスを含めた小売売上高、自動車販売、不動産販売など生きるか死ぬかの時に数字が伸びるはずもなく、実際にかなり厳しい数字がでた段階で株式市場は再度下方向を試す危険性を考える必要がでてきているようです。
実は日本はもっと酷い数字がでる可能性も
日本に関してはPCR検査を広範に行わないまま中途半端な非常事態宣言が出されていることから、誰が罹患しているのか、どこが集中的な感染発生源なのか何もわからず、テレワーカーに該当しないサラリーマンは延々と混雑した電車に乗って職場に通うという実に不可解な状況を継続中です。
こうなると果たしてどれだけの感染者がでるのかも予測できませんし、死亡者数すら想定できず、闇雲な物販や料飲店の営業自粛をこのまま一か月以上続ければほとんどの中小事業者が破綻に追い込まれる寸前のかなりきわどいところにまで追い込まれているのが実情です。
こうなると本邦のハードデータの経済指標は米国を上回るほど悪くなる可能性が考えられ、今のところ妙に楽観的に戻している株価が再度奈落の底に突き落とされるタイミングがやってきそうで恐ろしい状況です。
当然為替がこうした市場の状況に大きな影響を受けることは間違いないのですから、ここからはドル円なら常に下落方向を意識しながら取引する必要がありそうです。
3月に心臓手術で九死に一生を得たJPモルガンのジェイミーダイモンCEOはここから米国経済がかなり深刻なリセッションに入るであろうことを明確に示唆しています。
それは実態経済を街角で見ていてもひしひしと感じるものがあり、我々個人投資家も妙な浮かれ相場の再来に踊らされずにしっかり現実を見据える必要がありそうです。
企業収益が改善しないなかで戻す株式相場ほど信用できないものはありません。今はまさにこうした不思議なモラトリアムの時間帯に差し掛かっているものと思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎)