金融市場はどんなにその動きがおかしいと思っても結局のところ相場の結果が全てであり、市場に参加している個人投資家がどれだけ納得がいかないと思ってみても、仕方がないというのが正直なところです。
まして普通にしていても判りにくい状況にさらに監督金融当局の思惑やアルゴリズムなど人の感性とはまったく異なる売買の増幅が加わるわけですから、人の想定した相場を違う動きがでるのはもはや当たり前の状況といえます。
こうした相場に直面してなぜそういう動きになるのか嘆いてみても仕方ないのが実情ですが、それでもその状況の片鱗から今市場で何が起きているのかということは多少であっても見極めることはできるものです。
市場参加者の減少が相場を操作しやすくしている印象
米株はNY市の新型コロナ感染者数や死亡者数が減少するとアルゴリズムが発動して必要以上に買いが走るというなんとも不可思議な相場を示現しています。
週給ベースで雇用を維持する米国市場では、不況がやってくるといきなり首切りや帰休というものがはじまり、途端に失業者があふれかえるという日本などとはまた全く別の労働雇用環境が示現するわけです。
首切りが進むなかで消費が改善するわけもなく、また既存のローン支払いに滞納などがでれば新型コロナの影響はむしろこれから大変なものになろうとしているのは間違いなさそうで、感染が収まったらすぐに景気がV字回復と考えるとは相当稚拙な発想になろうとしています。
しかし米国トランプ政権はとにかく11月に大統領選挙を控えていますから、なんとか早期に回復した雰囲気を醸成したいと思っているのも間違いなさそうです。トランプのもとでムニューシンが組織するPPT・プランジプロテクションチームが必死に株価をもとに戻すべく動いている結果が、意味もなく連日1000ドル規模の相場上昇に繫がっている可能性は高そうです。
国内に目をやっても非常事態宣言後、それほど株価が下がらないというのは結構な安心材料になります。日銀を始めそれに追随するPKO軍団が必死に買い支えをおこなっているのは確実なようで、今週もかなり不自然な日経平均の動きを垣間見ることができています。
こうした株式市場だけの状況を見続けていますと、実態経済がはるかに悪化してまったく企業業績が株価に追随できないという現実をすっかり忘れ、新型コロナは株式市場では一旦終わったのではないかなどという戯けた発言をする個人投資家も散見されます。
しかし、問題はこれからであり足もとの相場の動きだけから先行きを楽観視するのは非常に危険な時間帯です。
為替にはまったくトレンドがでなくなった
こうした状況下で為替相場は残念ながら動きはあるもののまったくトレンドがでなくなっており、ここから上にいくのか下に行くのかを見極めるのが非常に難しくなってきています。
ドルが強いのはわかるわけですが、それでも一方的なトレンドがでるわけではありませんし、スキャルピング主体であれば少ない金額を積み上げて様子を見ながら取引するということは依然可能ですが、長い時間ポジションを保有していることは非常に大きなリスクになろうとしていることがわかります。
こうなると足元の相場ではとにかく無理をしないで、方向感に迷ったら一旦休憩しながらあまり根を詰めない取引を行うことが重要になりそうです。
また新興国通貨、とくに南アランド円やトルコリラ円などは今取引をするタイミングではなくなってきています。スワップで稼ぎたいと思う方の気持ちはよくわかりますが、こちらも少し様子を見る工夫が必要になってきているようです。
とにかく全体を通して相場の方向感や雰囲気というものがこれまでとかなり異なっており、市場参加者も決して多くはない状況ですからとにかく楽観視していくことだけは避けたいところです。
だれも経験したことのない「パンデミック相場は」想像以上にわけのわからないところに入り込もうとしているのは間違いなさそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)