読み込み中...3月、FRBは市場の緊急事態に直面しいきなり政策金利を合計二回でゼロに引き下げるとともに無制限の資産買い入れを発表し即日実施しはじめています。
たしかにパンデミックという100年に1度あるかどうかの非常時ですから思い切った政策を発動することが重要であることはわかりますが、果たして今回FRBが持ち出してきた政策で本当に株価の下落、債券市場の崩壊を回避することができるのでしょうか。
まだ始まったばかりですから敬虔に評価することは差し控えるべきなのでしょうが、本当にワークするのかどうかについてはかなりクビをかしげたくなる状況で、さらにとんでもないことを引き起こす引き金にならないかが危惧されるところとなってきています。
目指すは日銀が行ってきた緩和モデルの後追い
もともとこのFRBによる広範な債券等の買い付けアイデアは元のFRB議長であったバーナンキやイエレンが強く推奨してきたもので、この7年間というもの日銀が先行して行ってきた手法を真似ることとなっているのです。
これまでFRBは自国の国債の買い入れは過去のQEで行ってきたわけですが、今回は資産担保証券（ABS）の買い入れも決めています。
このABSは消費者ローンや自動車ローン、学生ローンなどを担保とした証券で、FRBが買い入れれば、間接的に家計の資金繰りを支援できるとしています。
ABSは中小企業の設備などを担保としたローンも組み込まれており、手元資金が不足する中小の支援にもつながるとの見通しを示しています。
確かに一時的にはかなり国民や中小事業者を支援することになるのでしょうが、果たしてこんなところにまで資金供給を行ってこの先どのように量的金融緩和から足抜けするのかが非常に気になるところです。
FRBはさらに日銀に倣うかたちで法改正を行うことでより広範な債券の購入を可能にするために動き始めています。現状でのFRBの関連法はリスク性資産の株式や債券の買い入れを禁じていますが、法改正をすれば市場で問題になっている社債についても直接買い取りすることで企業の資金繰りを支援することもできるようになるわけです。
しかし格付けが大幅に下がり単なるジャンク債にすぎないようなこうした社債を大量購入した場合その後のFRBが一体どうなるのかということは確かに誰でも気になる問題で、日銀でさえ緩和の出口を見失っている状況下でFRBがこれを常態的に実施すれば完全に緩和からの出口を失うことになりそうで、本当に大丈夫なのかという心配の声が高まるのも無理はない状況です。
中央銀行が個別の株式や社債を購入するなどというのは日銀以外にはなかったビジネスモデルですから、それをFRBが率先してやらかそうとすることに違和感を覚える向きが多いのはよくわかる状況です。
パウエルは結局トランプ政権を支える株高部隊なのか
トランプの大統領就任以降、結果的にFRBの政策はとにかく株価を下げさせないために動いているだけ
で、ほかのことは何も考えていないように見えて仕方ありません。
FRBは本来政権とは別のイニシアチブをとって金融政策を推し進めていくものであるといった大義名分はよく聞かれましたが、実際はパウエル自身も大統領が招集してムニューシンがコントロールしているPPT・プランジプロテクションチームの一員です。
つまり、株の下落阻止については深くかかわっているのが実情ですから、FRBが株価維持をシングルマンデートにしているとしか見えないという市場からの指摘も決して否定することはできず、
世界的に見てもFRBが市場からの信任をかなり落としてしまっているのはどうやら間違いなさそうな状況です。
こうした足元でのやり方が本当に功を奏し株価や債券市場の不安を払拭することができれば問題はありませんが、結局FRBの政策では中央銀行バブルの崩壊を防ぐことができないという事態に陥れば市場の混乱は現状の比ではなくなることも容易に想定でき、恐ろしいものがあります。
突然パウエルが持ち出してきた無手勝流の政策で株の下落を止められないことがはっきりした段階が非常に恐ろしい時間になりそうで、それがごく近い将来に起こらないことだけを祈りたいところです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
