新型コロナウイルスの感染に関する状況に関しては決して好転していると思える情報は全く出ていませんが、いよいよ各国の政治的な決断というものが相場にも大きく影響を与えそうな雰囲気が強くなってきています。
東京五輪は1年延期ほぼ決定か
東京タイム、安倍首相とIOCの委員長が電話会談を行って東京五輪1年延期がほぼ決まったことがメディアに流れ始めています。オフィシャルなアナウンスはもう少し時間がかかるのでしょうが、恐らくこの決定は足元の状況を見る限り揺るがないものになりそうです。
ただ、国内の状況を考えますと五輪開催延期でこれまで行ってこなかったPCRの検査を広範に実施しはじめると実際の感染者数が爆発的に増加することは容易に想像できるものがあり、まかり間違えば東京都がロックダウン、都市封鎖に追い込まれるリスクは相当高くなりそうです。
JPモルガンのウイルス予測サイクルによると中国はいち早くリカバリーステージに入っていますが、このチャートが間違いないものならば本邦はまだまだ驚くべきアーリーステージ(本当はもっと進行している可能性が高いが)であることは間違いなさそうで、実感染者数が公表されることになれば感染が進む主要国の中でもっとも対応の遅い国として扱われる可能性が高まります。
当然経済に影響がでるのは必至であり、景気を根強く反映するであろう株式市場がそれに反応してここからさらに下落し、為替がそれに追随するリスクは全くもって解消されていないことがわかります。
足もとでは誰が画策しているのか判りませんが年度末に株価の水準を引き下げてはいろいろ具合が悪い向きが総動員して日経平均を持ち上げようとしていますが、下落の問題がでるのはまだまだこれからになりそうで、株式市場への影響も日本がもっとも遅く展開する、いわばひとり負けに近い推移も覚悟しなくてはならない状況となってきています。
トランプは4月12日までに経済の再開を期待
一方トランプ大統領は25日に演説し、4月12日までには米国の経済を再開したいなどと荒唐無稽な発言をしはじめています。
米株はこの日PMIなどの経済指標が著しく悪化したにもかかわらずPPT・プランジプロテクションチームが稼働しているのか猛烈な相場の上昇を示現することとなり、株価の停滞と経済減速をなんとか払拭させたいというトランプの思惑がにじみ出たような発言が飛びだす恰好になっています。
しかし物理的には米国の新型コロナ感染がイースターまでに収まるといった見通しはまったくないのが実情で、あくまでトランプの掛け声によるなんの裏もない楽観的発言となってしまっています。
週明けのS&P500相場はすでにこのコラムでもご紹介しましたとおりトランプ就任時の株価を完全に下抜ける動きとなっただけに過去3年以上におよぶこのバブル相場は完璧な巻き戻しを見たのはどうやら事実のようでこうした株価の逆回転に対しても非常に神経質になっていることが足もとのトランプ発言につながっている可能性は高そうです。
各国首脳の政治的な発言や動きがウイルスを遣り込める重要なものになるのであればもちろん歓迎すべきものがありますが、もっぱら自身の政権の損得勘定だけを意識して発言したり、政策実行されることは景気にプラスになるはずもなく、ここへ来て非常に気になるものになっているといえます。
相場は景気の実態やウイルス感染の実態とは別に再上昇の軌道に乗るかのような動きを見せ始めていますが、現実はなんら解決がついておらず、経済的なダメージが数字になって明らかになるのはまだこれからとなる点は十分に注意しなくてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)