先週驚くほど上昇し、とうとう111円台まで登りつめたドル円ですが、さすがに111円台ではそれなりの重さも見え始めており、ここから一直線に112円台を超えて上昇するかどうかはまだまだはっきりしない状況が続いています。
このドル円の先週の上昇ですが、とにかくドルに対する市場の需要が強かったことが大きく買い戻される原動力となったことは間違いありませんが、その背後にある事情を考えますと今週以降継続するのかが非常に注目されるところとなってきています。
海外ファンド勢の損切の速さとレパトリが一つの原因という見方
米株市場における大きな下落が多額のマージンコールを呼びそれがドルキャッシュ需要につながってドル円を大きく押し上げたという見方は間違いないものと思われますがそれにもまして米系のファンド勢がとにかくあらゆる相場の下落局面でいち早く見切りのロスカットを行って資金をドル転してレパトリを行ったのが大きな原因ではないかといった見方も強まっています。
実際この1週間から10日のドル円相場の動きをみていますと、東京タイムの仲値までの1時間あまりは確実にドル高円安が示現するものの、それ以降はロンドンタイムに入るまではそれほど強くドル高が示現しないのが一つの特徴となっています。
そしてその後ロンドンタイムでは多少ドルが買われる時間帯があるものの、決定的な動きが示現するのは夜10時過ぎからのNYタイムで「LondonFix」に向けて大きくドル円は買い上げられるのがここ数日の習慣となっていたことがわかってきています。
こうなると米系ファンド勢のレパトリ需要が明確に現れていた可能性は高そうですが、月末に向けては一定の需要を満たしてしまった可能性もあり、とくにこうした動きが25日以降にも継続して出てくるのかどうかに市場の注目が集まり始めているようです。
マージンコールのドル需要も25日前後が山の可能性
株式市場のマージンコール、つまり追証の発生はここからの相場の下落次第の状況になってきていますが、これで一旦の下落がピークとなれば月末、米国における第一四半期末という節目にもあたることから追証についても25日前後がドル買い需要のピークになる可能性があり、こちらもこの25日以降の相場の動きに変化がでるかどうかを見極める必要がありそうです。
G7の主要中銀も相当な額のドルを市場に注入してその流動性を高める作業をしていますから、冷静になって考えてみればここから為替市場だけでドル円の需要がさらに猛烈に高まるかどうかはかなり微妙な状況で、仮に一定のドル円のドル買い需要が収束した場合クロス円の下落に改めて時間差のようにドル円が影響を受ける形で再度円高方向に押し返される可能性も考えておく必要がありそうです。
米国は今回の新型コロナ関連で莫大な財政支出を実施しようとしていますが、これが現実のものになれば国をあげてドル安を志向してくることは間違いない状況で、政治的にみてもドル円が青天井で上昇できるような時間帯にはなってきていないことも忘れてはなりません。
とにかく今回の相場暴落ではまったく想定していなかったドル買い、ドル円の10円以上の上昇前値戻しというものが示現して少なからず市場参加者が痛む相場となってしまったわけですが、ここからも想定外の動きがさらに登場してくる危険性に十分注意すべき状況のようです。
国内ではポンドや豪ドルでやられた個人投資家が相当発生しているようですが、4月に向けても気を抜かずに対応していきたい時間が続きます。
みなさん相場を断定することなく柔軟に対応できるように、しかも大きなポジションを持ち過ぎて闇雲に資金を減らすようなことがないようにお気をつけいただきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)