13日のNY市場はトランプ大統領が「非常事態宣言」を発令したことでリスクが明確化したことを好感したのか株価が大幅に上昇し前日の暴落をかなり埋めるような動きになりました。
それとともにドル円はまさかの108円台回復を示現することとなり、週初の下落からなんと7円近い上昇を見せています。
■ドル円4時間足
さすがにこの動きは意味が分からないと感じた方も多いのではないでしょうか。
実はこうした動きの背景には投機筋をはじめとして借金(レバレッジをかけた)をした取引の含み損への対応のためにドルのキャッシュを求める動きがこうした相場を作り出していることがわかります。
資金繰りのために売られる金、米債
12日の米国株式市場は1987年のブラックマンデーをさらに超えるほどの相場の速い暴落を示現することとなりました。チャートはほとんどフリーホールのような状態になり、サーキットブレーカーが複数回発令されたにも関わらず華厳の滝のような様相を呈することとなったのは印象的でした。
しかしこの時期からドル円は株価と一緒に下落しなくなり、金が売られ、米債の金利も徐々に上昇する動きを見せています。まさにこれが市場の流動性確保のために換金売りを始めた兆候であったことがわかります。
■ドル建て金価格推移
上のチャートはドル建ての金価格の推移ですが、2月に大きく上昇したものの米株が崩れはじめてから金価格も下落をはじめており、あきらかに含み損のある商品から換金売りがでていることがわかります。
また米10年債もこの一週間でみますと株価が暴落をはじめた9日には確かにFLY to QUALITYで買いが集まる形となり金利は極限まで下落することとなりましたが、その後は週末にむけてみるみるうちに金利が上昇しすでに1%に近いところまで上がって確実に売り込まれていることが確認できます。
追証、流動性確保のための強烈なドル買い需要の顕在化
さらにドルインデックスを見てみますと2月20日対円で112円を超えたあたりと比較してもドルインデックスはかなりの戻りを試す形となっており、市場全般でドル買い需要が高まりを見せていることが確認できます。
■ドルインデックス推移
9日からの3月第二週、株式市場の暴落と連動する形でまずはドル円も一緒に大きく売り込まれ101円台前半まで押し込まれる形となったわけですが、市場ではほとんどの投資家がキャッシュなどの竜毒性を確保する目的で利ののっている資産を大量売却しはじめ、逆にもっとも必要なドルのキャッシュを必要として猛烈なドル買いを行っていることがわかるわけです。
FRBはNY連銀を通じて短期のレポ市場に猛烈な資金を投入しはじめていますが、それでもレポ市場は安定化しておらず、市中にはまったくドルが足りない状況が顕在化してきています。
ドル円が一時的にまさかの108円まで値を戻すだけのことはある状況といえるのです。
本来リスクオフ相場のときに101円まで下落し、さらに下値を模索しそうだったドル円がここまで急反発するというのはどうしても理解できないと思われる個人投資家の方が実に多かったものと思われます。
しかし、実は市場をかき回す投機筋は株式市場をはじめとするポジションの維持や決済のために必死でキャッシュをかき集めることとなり、とくにドルキャッシュへの猛烈な需要が一気に高まったことがこうした特別な相場を示現させることになったといえます。
場合によっては週明けも109円方向へとさらにドル円が上伸することも考えられますが、こうした動きが恒常的に継続するとも思えないものがあり、どこかでまた反転下落するリスクを抱えることになりそうです。
米株は一気に20%以上下落して確実に弱気相場に突入していますが、過去の例から考えますとS&P500の市場は弱気相場に突入してから最安値に到達するまでにほぼ平均で83日、短くても71日程度は下落の期間となりますから、ここからすぐに相場が盛り返して元の上昇相場へと転換すると考えるのはさすがに時期尚早でさらなる下落相場が襲ってくることだけは覚悟しておく必要がありそうです。
この一週間のドル円の相場状況は実に様々な材料が交錯し、チャートでテクニカル的な分析を行っていたのではもうひとつ良く分らないところもありましたが、もうひとつ市場参加者の殆どが戻り売り相場と認識してしまいますと結局相場が下がらずにショートカバーからじり高に動いてしまうことも意識しておかなくてはならないことを実感させられました。
週明けもまだまだ危ない相場は続きそうですから気を引き締めて対応していきたいところです。