スワップ狙いのトルコリラのロング取引が危機的な状況に陥っています。すでにご存じの方も多いと思いますがトルコ中銀が政策金利を10.75%にまで下げて来たことでFXのトルコリラロングにおけるスワップ金利が大きく変化しています。
昨年6月までは政策金利が年利24%とウルトラ高金利通貨の位置にあったトルコリラですが、足元では10.75%まで利下げが行われており、これにともなってFX業者が付与するトルコリラ円やドルトルコリラ、ユーロトルコリラなどのスワップが激減しはじめています。
しかも一部の業者ではトルコリラのロングがマイナススワップに転落しかねない状況になっており、ここからのスワップ狙いのトルコリラ買い、長期保有は非常にリスキーな状況に陥りつつあります。
年利10.75%でも実質マイナス金利という厳しい状況
トルコの政策金利は最盛期の半分以下にまで低下しているわけですが、実はこの国は猛烈なインフレに苦しんでおり、本来は利下げなどしていられる場合ではないのです。
足元でもインフレ率は20%を超えていますから、実質的にはマイナス金利の状態に陥っているのが現状です。
またFX業者が提供するスワップ金利というのは本来ならば2つの通貨の金利差から賦与されたり支払ったりすることなるのですが、そこには大幅な業者手数料が差し引かれていますのでこれだけの金利が維持されていても銀行との取引の結果のスワップはたいした数字にならないことが往々にしてあるものなのです。
今回のトルコ中銀の利下げでトルコリラ円をロングにした場合のスワップは10万通貨でも10円を下回る業者がではじめており、今後ロングをしてもマイナススワップに陥るという驚愕の事態が発生しそうな状況になってきています。
正直なところ業者が手数料収入を差し引かなければロングでマイナススワップになることはまだないはずでかなり悪意を感じますが、相対取引というのはあくまでも業者が提供する数字で売買をすることが前提になりますから仕方ない状況にあるといえるのです。
トルコリラ円のロングマイナススワップ化では投げ売り暴落に注意
国内の個人投資家はなぜかスワップで稼ぐという投資法が異常にお好きなようでトルコリラ円のFX投資でもほぼ90%以上の投資家がトルコリラ円をロングで購入し延々と保有する投資スタイルを維持しています。
今回マイナススワップにまで調整する業者が一体何社出現するのかはまったくわかっていませんが、すでに10万通貨でも10円とか8円といった数字を提示しているところが増えていますのでたとえマイナスにならなくても投資妙味は大きく減退する状況となっています。
したがってたとえご自身が取引している業者がマイナススワップに移行しなくても市場でマイナススワップもしくはゼロスワップを提示する業者が続発した場合、ほとんどのトルコリラトレードの個人投資家が保有ポジションを一斉に手じまいし始める危険性があり、その場合にはFX投資家の動向だけでトルコリラ円が大暴落しかねない状況に陥るリスクを十分に考えておく必要があります。
今のところ急落という危機的な状況にまでは至っていませんが、そもそもトルコリラ円は実需が全くないなかでの取引ですから、流動性があるはずもなく一気に売りがでればドルトルコリラとドル円の組み合わせて生成されていますからドル円にも影響がでそうな状況です。
仮に多くの個人投資家が売りに殺到した場合それだけもトルコリラ円の価格が大きく下げる危険性は高く、できることならば大ごとになる前にリカクなり損切して撤退することがお勧めです。
国内の個人投資家はこの状況をよく呑み込めていないようですが、かなり危険なところに差し掛かっていることだけはしっかり認識しなくてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)