中国起因の新型肺炎の発症者は全く衰えるところを知らぬ状況で、連日その数は増加中ですが、さすがに罹患者数や死者数が増えただけでは株も為替もリニアには反応しなくなりはじめています。
本来本日1月31日に再開される予定であった上海市場が2月3日の休場明けにどのような動きになるのかが非常に注目されるところです。
ここまでの一週間の休場期間中、いつも東京市場や香港市場が代替市場として売りのリスクを受けることが多いわけです。
それなりの下押しはあったものの大暴落という世界にまでは至らずに今日に至っていることからそれほど大きな影響はないのではないかといった楽観論が米系の金融機関のアナリストからは飛び出していますが、実態経済の悪化ははるかに我々の想定を超えている可能性が高く、油断は禁物の状況です。
なぜか楽観的過ぎる米国勢には明確な理由が存在
米国の金融市場は依然としてFRBが過度な隠れQEを実施し月額600億ドルのTビル購入に加えて適宜短期のレポ市場に資金を投入しているわけですから新型肺炎が流行したと言っても行き場を失った資金が大量に米株市場に流入してくるのは間違いなく、しかも短期金利が高くて長期が安いという逆イールド状況はまさに資金が米国市場に集まりやすい環境を作っていると言えます。
トランプが組織しているPPT,プランジプロテクションチームはなんとしても今年株価を下げさせないように画策していますから新型肺炎報道から押し目ができれば絶好の売買チャンスとして株買いが出てきているのは事実でありこれが米系金融機関のアナリストに楽観的な見通しをもたらしていることはほぼ間違いない状況です。
またくの金融市場のアナリストが足もとで分析しているのは2003年のSARSの時の株価動向とともに罹患者数、死亡者数と今回の新型肺炎との比較を行っていることが挙げられます。
1918年にスペイン風邪が流行して日本でも少なくとも39万人が命を失った件は極めて有名ですが、当時の詳細データはまったく存在しておらず、AIが相場分析する としてもこの2003年のパンデミックの例だけしかベンチマークの材料になっていないというかなり心細い状況です。
SARSはすでに収束した案件ですから全体の発症数と死亡率との比較では今回の新型肺炎のほうがはるかに死亡率が低いというのも楽観的な見通しになっているようですが、病理の状況に精通しているわけでもない金融アナリストがこうしたSARSだけとの比較で楽観的な見通しを出すのもいかがなものかという印象があります。
中国政府は年末早い段階でこの問題が起きていたことを1月になるまで黙っていたわけですから、今足元で発表されている数字がどこまで本当なのかという問題も出てくることになりそうです。
経済の実態をもっとも反映するのは株価ですからやはり2月3日からの上海市場再開後の相場の動きが非常に重要なものになってきそうです。
上海のマーケットが再開になりますと、具体的に注目されるのは上海株とともにコモディティの価格、原油先物価格、資源国通貨の動向などですべて中国経済の影響を受けるアイテムばかりだけにこれらが一斉に価格を下げることになると他国の株式市場にも相当な影響がでることを覚悟しておかなくてはなりません。
為替市場に関して言えばどう見てもネガティブな影響がでるのがオーストラリアドルやニュージーランドドル、カナダドルなどの資源国通貨でこうした通貨と組み合わせたクロス円が大きく下落するとそれに引きずられるようにドル円も下落の可能性が強くなりそうです。
ただし直近ではドル高と円高が両方発生した場合ドル円はほとんど動かないという事態に追い込まれることから、円高による下落を狙うのであればクロス円を選択したほうが賢明になりそうです。
2月3日といえば奇しくも国内は節分ですが、果たして上海市場起因で相場にどう影響がでるのかに注目したいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)