21日の東京市場ではコロナウイルスに対するリスクが既に嫌気され始めているようで日経平均も一旦下落に転じる形になっています。
FRBの隠れQEのご相伴にあずかる形で景気実態とはなんの関係もなく上がってきた日経平均ですからこれ以上上昇しないと投機筋が見て売りに転じれば高速取引のアルゴリズムが同調して下落を加速させるなどということはよくある話です。
必ずしもこのコロナウイルスのリスクで相場が下落したと断定するのは禁物ですが、春節を前にして一定のリスクが出る可能性は高そうで、為替にどのような影響がでるのかが非常に危惧されるところです。
そもそもパンデミックとは・・
パンデミックという言葉は最近メディアではかなり頻繁に登場するようになっていますが、広範囲に及ぶ流行病のことを言うわけで、特定国だけでなく世界的な広がりをもつような病気のことをさします。ちなみに地域流行病はエンデミックとよばれ一応区別されている状況です。
人類の歴史の中でいいますと14世紀に西洋を中心としてペストが流行したといったものがありますが、20世紀以降でいいますと1918年に突然一種のインフルエンザであるスペイン風邪が広範に大流行し世界で4000万人以上、国内でも39万人以上の死者がでたという大惨事になっています。
大正7年といえば国内に外人が入ってくる数はかなり限られていましたし、海外に渡航するものも相当限られていたはずでそれでも39万人が死亡しているというのはかなり驚愕の事実であったといえそういです。
コロナウイルス起因の肺炎は果たしてパンデミックになるのか
さて、問題のコロナウイルス起因の肺炎ですが、中国武漢で発生が確認されたこの肺炎は45人ほどの罹患者が発生したと言われているものの人口の正確な数すらよくわからない中国にとってはこんな少ない数で終わるはずがないのはだれしもがイメージできるものです。
すでに人から人に感染するという話もでてきているわけですが、ちょうど24日から運悪くというか春節で中国内でも4億人以上が帰郷など旅行にでることからかなりの勢いで感染が拡大することが危惧される状況です。
すでに18日あたりから休みに入っている人も多いようで、この時期海外への渡航者は例年でいうと700万人以上になりその半分以上が日本にやってくるというのですから、穏やかな話ではありません。
この肺炎は今のところ治療方法があるわけでもないですし、なんらかのワクチンが開発されている状況でもないので命にかかわる状況になるのかどうかが非常に気になるところですが、これがどこまで広がるのか、また生命への影響がどの位なのかによって金融市場に及ぼす影響も変わることが予想されます。
日本で大幅感染拡大した場合一体為替はどうなるか?
中国で発症し、日本で大幅拡大などということになれば為替では当然円が売られることを誰しもが想定するところですが、逆に世界的な流行ということで本来のパンデミックのプロセスをとるようになった場合には広域的なリスクオフにつながり、逆に円やスイスフランなどの逃避通貨に資金が流れ込んでくることも想定されるところです。
過去には鳥インフルエンザなどで円高になったという経験はありませんが、今回の肺炎が本格的なパンデミックとなり、しかも命を落とすほど深刻な状況になるとなれば想像以上にリスクオフが進行することも考えられ、あくまで今後の感染の拡大状況に注目することが必要になりそうです。
それにしても旧正月の前にこうしたことが起きるというのも実にタイミングの悪い話で、しかも中国から日本にインバウンド消費で大量の観光客が来るタイミングに発生しているというのはなんとも気分の悪いものがあります。
パンデミックの場合には、為替よりも人の命のほうが重要ですが、相場に影響が出る可能性があるということもしっかり認識しておきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)