明けましておめでとうございます。2020年の始まりです。昨年末から今年の市場予測というものがかなり広範に出されるようになっていますが、株式市場の世界では想像以上に楽観的な見通しが多く、逆に為替ではドル円を中心にしてそれほど大きく動かないのではないかといった慎重論を目にすることが多かった印象があります。
ただ、識者といえども未来予測はもっとも難しいものの一つですから、実際に相場が動き始めてみないことにはまったく判らない部分があり、決めつけてかかるのは禁物です。
ただ、昨年10月からFRBが怒涛の緩和、金融資産の買入に舵を切ってしまってことで米国を中心として株式相場は異常とも思える超楽観状態を継続中で、少なくとも今年6月までこの緩和状態が継続するとなると当分株価が下落する可能性はきはめて低いという見方が広がっていることは事実です。
モルガンスタンレーの調査分析予測によれば今年1月中盤でFRBの資産保有総額は過去最大レベルになり、実はQE3実施時期を超えるレベルにまで拡大することがわかっています。
ここからさらに資産買入を増加させていくというのですから、FRBは公式には様々な御託を並べて政策実施理由を口にしていますが結局ベンチマークにしているのは単に米国株価の状況だけになっており、結果的にもトランプの意向にかなり沿ったものになってしまっているわけですから大統領選挙にどこまで忖度してその動きを加速させるのかで相場の動きが継続するのか変化するのかが決まっていくことになりそうです。
正直なところ従前からのファンダメンタルズ的視点でこの相場を予測するのは非常に難しく、ある意味ではナンセンスな時間帯に入りつつあることを実感させられます。
ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを率いたことで有名なスタンリー・ドラッケンミラーはパウエル議長について、政治からのプレッシャーに対し何も抵抗しておらず、金融政策の枠組みを持たないイエレンが今のパウエルで、何に信念もないと批判しています。
足元の政策結果を見ますととにかく拡張的なFRBの政策が刹那的に経済をよくしているだけというのが彼の見方で、実際に相場状況はまさにそのような状況に到達しているようにみえます。
問題は緩和政策が麻薬同様どんどん市場に効かなくなること
刹那的にしかならないにせよ、一定の持続効果が発揮されるものになるにせよ緩和政策というのは日米欧の中央銀行のやり方を見ていますと続ければ続けるほどさらに強いものを市場が期待し、要求するようになることからその効果は漸減していくことは間違いないようで、恐らく最終的にはどんなに協力なものを打ち出しても市場に効かなくなってくることが確認されています。
麻薬中毒患者が薬をやめられずさらに強いものを求めて最後はいくら使用しても効果を得られなくなるという悲惨な状況を金融政策の上で実施しているのが今のFRBのやり方だとすれば、どこかで相場の上昇は断ち切られる可能性を考えておく必要がありそうです。
それが年初に起きるのか年末まで引っ張れるのかについては正直なところ誰にもまったく判らないわけですが、少なくともFRBの緩和継続=相場上昇維持安泰と安易に考えるのは大きな間違いになるリスクを抱えていることだけは常に意識しておく必要がありそうです。
実に21年ぶりに米株も上昇しながら債券価格も上昇するというとてつもない非相関的な動きが示現し始めていますが、これがどの段階で崩れるのかも注意深く見守る必要がでてきているようです。
言ってみれば足元の状況はエリオット波動でいうところの第五波動の最終ステージにあり、急にとん挫することもありえますし、このまま突っ走ってしまうこともありうる状態でどちらかに決めつけてみるのは非常に危険です。
とはいえシラーPERでみてもCNNの恐怖と欲望の指数でみても完全に超楽観状態に陥っていることはまちがいなく、必ずその揺り戻しが結構な値幅で示現する危険性を意識しておく必要がありそうです。
今年の相場は昨年にもましてやりにくく、しかもリスキーなところに差し掛かっているようです。新年から脅かすような内容で恐縮ですが皆様十分にご注意いただきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)