今年の1月3日、ドル円が急落したいわゆるフラッシュクラッシュが突然市場を襲ったのは記憶に新しいところですが、実はこのフラッシュクラッシュはまずドルトルコリラが急激に売られるところから始まり、結果的にトルコリラ円やドル円に波及してもっとも下値にオーダーのなかったドル円が大きく下落するという事態に発展しています。
こうしたフラッシュクラッシュというのは当該通貨ペアだけで起こるわけではないことを如実に示しているものといえるわけですが、直近のトルコの政治情勢起因のトルコリラの下落はまたしても年末年始のFX相場に波乱を起こしそうで相当な注意が必要になってきています。
米国に対していきりたつエルドアン
トルコのエルドアン大統領といえば今月米国上院が既に一世紀も前の話であるアルメニア人虐殺事件を今頃虐殺と認定したあたりから米国との関係がかなりぎくしゃくしはじめているわけです。
さらに足元でトルコがロシアから購入したS400ミサイルをめぐって米国が制裁を示唆していることに対し報復を公然と口にし始めていますし、さらにロシアの天然ガスを黒海とトルコを経由して欧州に輸送するトルコストリームと呼ばれるパイプラインへの米国の報復示唆にたいしても非常に厳しい態度をとり始めている状況です。
クリスマス休暇に入ったトランプサイドはあまり厳しい反応を示してはいませんが、トルコいじめはNATOつぶしではないかとも見られていますのでそう簡単には収まらない可能性が高まっています。
これがお互いの報復合戦の火ぶたを切るようなことになるとトルコリラは対ドルでもかなり売られることが予想され、当然トルコリラ円にも大きな影響が出そうな状況となっているのです。
投機筋は本邦個人投資家のトルコリラ買い増しをしっかり把握
トルコリラ取引で非常に危惧されるのは本邦個人投資家筋が「価格が下がる」としきりトルコリラ円のロングを増やしていることですが、実は日足、週足でみても既に売りトレンドが明確に出始めており、さらに下落する可能性が高まっている点もこの年末年始相場では気になるところです。
トルコ中銀はこれまでリラの価格下落防止のためにかなり買い向かいをしていたようですが、足元ではそれも止めてしまっているようですから一気に大幅下落が示現するリスクを相当考えておく必要がありそうです。
トルコリラ円 日足推移
上の日足の推移を見てもわかりますが、2018年の8月のトルコリラの暴落で15.250円をつけていますから最低限ここまで下押す可能性は十分にあるわけで、もっといえばトルコ関連でリスクオフがさらに進めばドルトルコリラが大幅に上昇することでトルコリラ円、ドル円が相関性を伴って大幅下落することが危惧されます。
とくに30日から1月3日までは本邦が正月休みであることは広く認識されていますからこのタイミングに大きな下押しが出た場合、強制ロスカットなどがトルコリラ円で大量発生しますと想定外の下落となる危険性があることもよく認識しておく必要がありそうです。
できることであれば一旦リカクなり損切するなりしてこの年末年始休みはポジションを保有しないのが最善の方法ではないかと思います。
強制ロスカットすら効かなくなってしまいますと証拠金を超える損失がでるリスクがかなり高くなりますので、レベル感からポジションをふやす、いわゆるナンピン状態を継続させるのはきわめて危険です。
ロスカットを置くのであれば相当浅めにセットすることが必要になりますし、今の段階で含み損がないのなら一旦スクエアにしてすっきりとした新年を迎えたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)