消費税率が10%に引き上げられて以降初の調査となっている日銀の12月短観は案の定消費低迷が色濃くでる結果となっています。
短観の代表的な指標である大企業製造業の景況感を示す業況判断指数はゼロで前回の調査からは5ポイント下がり、6年9か月ぶりの低水準となっています。
それでも政権も日銀総裁も景気は緩やかに回復しているといった呪文のようなことを相変わらず口走っていますが、状況は1998年に極めて似てきていることを感じます。
一言で言えば足元の状況は不景気の株高で、米国株の堅調、史上最高値に引きずられる形で上昇している日経平均ですが、どうみてもここから来年3万円になるとかいう幻想のような話を受け入れるわけにはいかない状況になりつつあります。
98年といいますとすでにミレニアル世代の投資家はどんな年だったのかまったくリマインドできないようですので今回はこの年と比較して2020年がどうなるのかを予想してみたいと思います。
97年橋本内閣が無理やり消費増税を行い翌年日経平均は大崩れ
1997年橋本内閣はバブル崩壊から7年目にして財政の健全化をめざして消費増税を行っています。このタイミングでは米国からも見送ったほうがいいのではないかというアドバイスがあったと聞きますが、橋本首相は増税に踏み切り、さらに緊縮財政も同時に進めることとなりました。
結果は言うまでもなくボロボロの状態でこの年は運悪くアジア通貨危機があり翌年にかけて山一證券は破綻するは北海道拓殖銀行は破綻するはで金融市場に逆風が吹きまくったこともあり、本邦ではとうとう労働分配率が下がりはじめ、実質賃金がマイナスに落ち込み始めます。この実質陳儀の低下というのは足元の状況に非常に似ており、覿面に消費に影響を与えることとなりました。
参議院選挙で惨敗を喫した橋本内閣は首相が辞任し小渕恵三内閣へとバトンタッチすることになります。小渕内閣は実に40兆円という大規模な財政出動を行いますが、崩れ始めた株価を支えることはできず、98年2万円台だった日経平均はその後1万4000円割れまで一気に下落、完全なデフレ社会に陥ることになります。
これだけの財政出動をしても結果的に4割近い株価の下落を食らっているわけですから、消費増税ネガティブ効果は相当なもので、現状で安倍政権が民間の費用も含めて26兆円と言い出している経済対策では焼石に水になる可能性はきわめて高い状況です。
もちろん今年から来年にかけては深刻な金融危機が起きているわけではありませんから、その分は割り引いてみる必要がありますが、仮に今の日経平均株価から4割ダウンが現実のものになった場合1万5000円台に落ち込むのもまんざら嘘ではなさそうなところに差し掛かっているといえます。
やっかいなのはデフレに逆戻りとなること
経済アナリストなどはあまり声高に言いませんが、どうも消費増税後完全に本邦経済はマイナス成長に落ち込みはじめているようで実は完全にデフレに逆戻りしてしまった可能性が高まっています。
ご存知のとおり98年本格的にデフレに突入して以来日本は20年以上もこの状況から抜け出せずに7年間日銀が量的金融緩和につとめても結局2%の消費増税でもとの状況に戻ってしまっている点が非常に気になります。
株価は景気の先行きを示す先行指標である点はご存知の通りですが、97年のケースをみても増税から株価が崩れ始めるのは1年近いリードタイムがあります。
ということは来年の五輪の前後にはすでに相場が崩れだす可能性は高く、ことによるともっと前倒しになることすらありそうで、ドル円が株価に合わせて上昇するなどという期待はまったく持てないのが実情です。
果たしてこうした状況が本当にやってくるのかどうか粒さに市場状況をチェックする必要がありますが、ひとつのシナリオとしてしっかり考えておく必要があるものと思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎)