米国民主党は11日トランプ大統領に対する弾劾条項、いわゆる弾劾訴追状を発表し、トランプ氏を職権乱用と議会妨害の罪に問う内容であることがわかりました。
米国ではメディアもこの件については異常とも思われるほど時間を割いているようですが、国内にいますとここからどうなるのか、またタイムスパンがどのぐらいの話になるのかが今一つよくわかりません。そこでここからのプロセスについて触れてみたいと思います。
弾劾裁判は長丁場
ここからのプロセスについてはAFPBBがサイトに掲示しているプロセスマップが非常にわかりやすいのでこれを見ていただきたいと思います。
上のマップの中の赤で囲んだのがあしもとの状況となります。現状は弾劾裁判を実施するための公聴会を長々と開催したわけで、11日にそれを受けてようやく弾劾条項を起草したところまで来ているわけです。
しかしここからがかなり長丁場で、まず下院で弾劾条項を審議し裁決して可決されると今度は上院で同様のプロセスを繰り返すことになります。
クリントンのケースでは一つの議会での審議から裁決までは5週間以上がかかっていますから年明けから本格的にやりはじめたとしても春先まで延々とこの件を扱うことになるわけで、民主党にとっては確かにトランプ叩きのいい材料なのかも知れませんが、大統領選挙に集中すべき時期にこの件にかなりの時間と労力をとられてしまって本当に選挙にプラスに働くのかを疑問視する声も増え始めています。
また皆さますでにご存じのとおり下院は確かに民主党がマジョリティであるものの上院は共和党が制圧していますから単純に弾劾が成立するとは思えない状況です。
米国の議会の場合には日本の政党のように党議拘束がかかることはないようで、それぞれの議員が自らの判断で採決することから実際に投票してみないと結果はわからないようですが、それにしてもトランプが決定的状況に追い込まれる可能性は現状ではかなり低いようです。
株も為替もほとんど影響を受けていない
気になるのはこうしたプロセスが進展する中で株や為替が影響を受けるのかどうかということになります。いまのところこの問題で株も為替も大きく売られるような流れにはなっておらず、ここから何か決定的な問題が露見すれば別ですが、足元の材料だけで相場が大きく変動する可能性かなり低そうな状況となっています。
もちろん政治は水物ですら先の話がどうなるかは全くわかりませんが、下院で弾劾が可決になれば多少相場も動揺するのでしょうがそれまではあまり気にしなくてもよさそうな雰囲気になってきています。
今回の弾劾の条項ではトランプ大統領がウクライナ政府への支援を保留し、民主党の政敵バイデン氏に対する捜査の発表を求めたことが大きなポイントになっているのはご案内のとおりですが、このバイデン氏と息子の行状も逆に決してよろしくないものであることが露見していますので、必ずしもトランプだけがダメージを受けるわけではない点も注意が必要になってきています。
今年の年末はかなり為替に影響を与えそうな材料で出てきていますが、相場を動かすものは意外に限定的で今週英国の選挙結果と15日に実施予定の米国の対中関税がどうなるのかがはっきりすればいよいよクリスマスまでは動かない相場の時間帯に突入することになりそうです。
すでに東京タイムでは連日ドル円の10銭動くか動かないかといった非常に少ない値幅を延々と続けていますから、市場参加者がかなり減少していることが窺われます。
無理して取引するのではなく、大きなポイントに注目して利益を獲得できるチャンスを狙いたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)