みなさんもご存知の通り、もともと三井物産の社員で為替取引を裁量で行っていた人物が自分でも売買を始めて結局多額の資金を溶かしてしまい、自己破産を申請したものの認められないまま窮地に陥っていたのが・・・なぜかマクドナルドに転職し、まんまと会社のカネを合計7億円も着服してとうとうお縄頂戴になったという話が市場で話題になっています。
この犯人の男の素顔を深堀するのは週刊誌にお任せするとして、今回はこの事件から得るべき教訓のほうにフォーカスしてみたいと思います。
FXはなにより証拠金管理が基本
FXというのは確かに大きな証拠金があればかなり楽に利益を出すことができます。1万円、5万円、10万円といったいわば小銭から大きな資金へと成長させていくのはイメージとしてはもちろんよくわかりますが、大変な根気と時間がかかるものであるのは言うまでもありません。
その昔国内でも400倍程度のレバレッジが利用できたころはいきなり億トレーダーになる学校の先生や主婦などが続出し、脱税でも摘発されて驚いたものですが、今どきはそうした景気のいい話も聞きません。
今回の容疑者は最初から7億円を着服して投資したのではなく損失が徐々に膨らんでその穴埋めにかき集めた2億円をまたしても溶かしてしまったあたりから決定的な状況を迎えたようです。
どういう取引をしていたのかはまったく開示されていないのでわかりませんが、容易に想像がつくのが自分でルールを決めて損切りをしないまま追加でポジションを作ってナンピンのような状況から損害をさらに大きくしてしまったのではないかということです。
FX投資にのめり込んでしまいますと証拠金さえ多額にあれば楽に勝てるという錯覚に陥り勝ちです。
しかし、結局のところ自分で決めた厳密なルールを守って損失を限定化し資金を闇雲に減らさないようにすることができなければ、100万円投入しても1000万投入しても2億投入しても結局結果は同じ事になるということを強く示唆した事件であるといえます。
個人投資家がFX投資で唯一できるのが損失管理
FXはいくら毎日、毎月いくら稼ぐなどという目標を立てても本当にそれが実現できるかどうかなどはまったく何の保証もありません。つまり利益獲得管理というのは結果論であって、そもそも管理ができるものではありません。
唯一市場参加者が管理できるのは損失管理だけで投資総額の5%失ったら一旦すべて損切して退場する、金額が大きくなった場合は1%の損失で退場するといったような自己ルールを設定してそれを愚直に守ることができなければ何度証拠金をかき集めて挑戦してもすべての証拠金を結局溶かしてしまうことになるのです。
この容疑者のFX取引の顛末は結局のところその部分の管理ができなかったことに尽きるといえるのではないでしょうか。
もちろんそれだけの多額の小切手の振り出しを許していた企業の管理の問題は相当大きなものがありますが、FX取引をするものとしてこの事件をもっとも意識すべきはやはり損失管理、つまり証拠金の適正管理にあることを改めで痛感させられた次第です。
この話、規模は10万、20万かも知れませんが毎回すべて証拠金を失ってまた証拠金を足しては相場にエントリーしている方にとってはとても他人事とは思えない話ではないでしょうか?
つまるところ取引の方法がうまくないという基本的な問題もありますが、自主的に損切りができないことが最大の問題であることは明白です。
FXにのめり込む人すべてが犯罪を犯すとは言いませんが、ここで起こっている事態は結構個別の個人投資家にとっては無関係とはいえないものであることがわかります。
この際ご指針のトレードと証拠金管理をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。すべての問題はあなた自身にあることが殆どです。
(この記事を書いた人:今市太郎)