日本時間の20日午前中、米国の上院議会が香港人権法案を可決したことから、急激に市場にリスクオフの緊張感が高まりつつあります。
まだ議会で可決しただけですから上下両院別々の案を一本化するか下院が上院の内容をそのまま承認したうえでトランプ大統領のサインが必要になります。
しかし、これが成立した場合には中国政府は報復措置をとるといきりたち始めていますので、米中の貿易協議の第一弾の合意と署名はできないままに12月15日を迎える可能性がかなり高くなってきています。
香港人権法案成立なら毎年一国二制度順守の検証が実施
この香港人権法案は米国内で発効されるものですから、具体的に中国に対してなにか拘束力を発揮するものではありませんが、年に一回一国二制度が守られているかどうかを検証するとしていますから、中国にとっては内政干渉の材料として機能することになるため、反発が起きるのは必至の状況といえま
す。
中国が何を報復措置として持ち出してくることになるのかはまったくわかりませんが、その内容次第ではさらに米国が制裁措置に動き、対立がエスカレートするリスクはかなり高まることになります。
中国にとっては追加関税実施が不可避な状況に
ここのところ中国政府は米中協議の進展に否定的な発言をするなど結構様子見を決め込もうとしている姿が窺えます。
しかし、海外の調査機関の分析によれば今の追加関税がそのまま発動された場合中国のGDPは2020年に-1.4%近く下落し、米国自体が被る損失の-0.4%程度をはるかに超えるダメージを受けることになるという見通しがでています。
仮にすべてがこの見通し通りにならなかったとしても経済に与えるインパクトはかなり大きそうで、本来であれば年内にすべての追加関税を撤廃できることが重要なはずですが、香港問題はいきなり足かせになってきている状況です。
香港は既に海外のメディアでも詳細報道されている通り内戦のような状況になってきていますから、中国の軍隊が投入されてもなんらおかしくないところにさしかかってきています。
死傷者が続出するようなことになれば米国側が相当態度を硬化させてくることは間違いなさそうで、もはやトランプ政権との交渉だけでは済まないところに入り込もうとしています。
ただ、トランプ大統領が米中協議を優先して同法案の成立を拒否した場合には多少状況が変化することも考えられ、トランプ発言も注目されることになります。
株も為替も相場は米国ではすでに年末モード入りしている雰囲気がかなり高く米中問題だけが材料となって相場が動いている感があります。
したがって想像以上に大きな動きが示現する危険性もありそうで、迂闊に相場の方向に逆らった取引をしないことが必要になりそうです。
中国との協議に絡むトランプ政権の関係部門はしきりに楽観視の姿勢を見せていますが、米国ならびに米国民は相当中国に対して厳しい姿勢を持っていることから、どこまで議会と世論にトーンを合わせるのかも大きな問題になりそうです。
本来は12月15日前のどこかで一応の合意があって相場が大きく上昇したところが絶好の売り場になるのではないかと期待していましたが、そういう場面がないままに年末を迎えることも想定しておかなくてはなりません。
ドル円は目下のところ108円にかなり固まった買いが残っているようで果たしてこれを下抜ける勢いが生まれるのかどうかが注目されますし、109円台はもはや重さ満載で簡単に109.500円や110円にあると言われるノータッチオプションを粉砕しに行くような相場状況にあります。
ここからは下押しについて行って下がらなくなったらリカクするといった臨機応変な対応で利益を積み上げていくことを考えていくことが肝要となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)