米国民主党はバイデン候補とその息子の動きをめぐってトランプを弾劾裁判にかけようとする動きが強まっていますが、足元ではもうひとりの候補であるエリザベスウォーレン上院議員の人気が高まっており、徐々に金融市場にもその影響がではじめています。
とにかくこのウォーレン候補は原理原則を守ることを非常に重視しており、ハーバード大で法律を教えていた法律家ですから、発言も厳しく、トランプの甘い感じとは全く別の性格を発揮し始めています。
民主党内で大統領候補になれるのかどうかについてはまだはっきりわかりませんが、明確さということでいえばバイデンとは比較にならないものがあり、このままでいけば大統領候補になる可能性がかなり高くなってきているようです。
中国の米中協議柔軟化もウォーレン効果という見方も
エリザベスウォーレン女史はかなりの原理主義者であり社会の不正や不公平と言った問題については徹底的に追求し改善をもとめていくかなりのやり手となっています。
しかも彼女が指摘する問題は完全に本質をついておりウォール街でもいよいよウォーレン候補の存在をかなり脅威と感じ始めているようです。
直近では9月末にいきなり発生した米国短期のレポ市場の金利高騰がJPモルガンの仕業なのではないかという質問状をムニューシン財務長官に送り付けていますし、ダイモンCEOはその説明に躍起になってワシントンを飛び回ったという話も伝わってきます。
ウォーレン上院議員はGAFAの解体も口にしていますし、高額所得者に対する新たな課税も政策の中に検討しているようで、仮にトランプからウォーレンへと大統領が交代することになれば米国は新たな社会民主主義国へとシフトしていくことも十分に考えられる状況です。
これは中国にとっても頭の痛いところのようで、本来は2020年にトランプが選挙で負けることも想定して米中協議をのらりくらりとかわして時間稼ぎをしようとしていたわけですが、下手をしてウォーレンが大統領にでもなろうものならばさらに風当りが強くなり、トランプのように金で解決させることができなくなるリスクも高まることから一部の通商交渉を妥協するのではないかという見方も強まっているわけです。
このようにウォーレン候補の登場は意外なところに影響を与え始めているといえるのです。恐らくこの状況でいけば11月中に第一フェーズについては合意と調印が実現しそうな気配濃厚であり、想像よりも早く交渉が進んでいくことも考えられる状況になってきています。
米国企業の自社株買いも今年がピークの可能性
ウォーレン候補は当然のごとく企業に対しても相当厳しく臨んでいく意向で、企業経営者が自らのストックオプションを高値で行使するために自社株買いに奔走するのもまったくよろしいこととは思っていないようで、ややもすればそれを規制する法案を議会に提出することもありえそうです。
こちらは大統領になるならないは関係なくできることですから、これまで野放図だった自社株買いも一定の規制がかかるのは時間の問題になっているようで、来年はそうした動きがかなり減るのではないかという見方もでてきはじめています。
現状ではウォーレン議員が当選する可能性はまだまだ低そうですが、何が起きるかわからないのが米国の大統領選挙ですからウォーレン議員が候補として登場するだけでもそれなりの効果はありそうな状況です。
株式を中心とした金融市場に影響がでるということはとりもなおさず為替にも影響がでるのは必至の状況ですから、ここからのウォーレン議員の言動にはそうとう敏感になっていく必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)