このコラムでも過去に何度となくご紹介しているCLO市場ですが、ここへきてさらにその相場がクラッシュするリスクが一段と高まってきているようです。
CLOは日本語ではローン担保証券と呼ばれるもので、非常に信用度の低い企業に貸し付けられたレバレッジドローンを分解して様々なものを組み合わせ格付けだけを一段と高いものに組成して販売されている証券で、そのやり口は2007年から2008年にかけて大問題になったサブプライムローンベースのCDO,債務担保証券組成の手口とほとんど同じものになっています。
BIS・国際決済銀行が発表している四半期報告書によればCLOの発行残高は実に7500億ドルにまで膨らんでおり、サブプライムローン問題で市場が破綻の引き金になる直前のCDO市場の6400億円を上回る規模になっています。
しかしこのCLOの格下げ率は過去3か月でみても7.2%とかなりの勢いで格差が進んでおり、ややもすればデフォルトリスクよりも格下げのほうが市場にとってはかなり大きな問題になりそうな状況といえるのです。
エリザベスウォーレン議員もCLOに大きな関心
現在、米国民主党の大統領候補としてもっとも有力な存在になりつつあるエリザベスウォーレン上院議員もこのCLOに関しては並々ならぬ関心をよせており、とくにかなり甘い格付けの問題とそれを安易に許してきたSECの責任を追及する構えがかなり強くなってきています。
このCLOの格付け問題が顕在化した場合、広範な見直しが進みさらに格付け悪化が進むことは十分に考えられるだけに大きな市場であるわりに流動性のないCLO市場に一気に売りがでた場合にはかなり大きな損失が発生し、そもそものレバレッジドローン市場や隣接するハイイールド債市場が大幅下落するリスクにもつながりそうな状況になりつつあるようです。
問題は本邦金融機関の大量CLO保有
このCLOについてはもう一つ非常に大きな問題が内在しています。それは本邦の金融機関が大量に保有していることで特に農林中金、ゆうちょ、三菱UFJの保有の大きさが目立ちます。
金融庁もすでにこの春に検査に乗り出したことが分かっていますが、特別減らした形跡もないようでむしろ池の中で大量保有のクジラになっているのはこうした金融機関自身という厳しい状況に陥っているようです。
つまり相場が下落し彼らが売りに回るとそれ自体が相場暴落の引き金になるわけで、もはや簡単に手放すわけにもいかない状態になりつつあることがわかります。CLOから始まる流動性枯渇パニックはいきなり信用収縮をほかの市場にも起こしかねず、かなり問題になりそうです。
表面上米国を中心とした対岸の火事のように見えるこの問題ですが、CLO市場がクラッシュした場合真っ先に本邦の金融市場に大きな影響がでることになりそうで、ここがサブプライムローンの問題が発生した時とかなり異なるものになりそうです。
これまでレバレッジドローンやCLOの市場は危険ではあるもののまだまだ大丈夫とされてきましたが、一部のファンドはすでにレバレッジドローンから資金を引き揚げ始めており、急激な相場の売りがでるのもそう遠い話ではなくなっている点はひどく気にかかります。
足元ではFRBが隠れQEを実施してほぼQE3並みの規模の資金供給を市場に行っていますから株式市場のほうは当面安泰の可能性が高いわけですが、こうした社債関連の市場に問題が発生すれば相当な影響が出そうであるため、とにかく年末に向かってはこの市場の動向とウォーレン議員の動きにも目が離せなくなってきています。
これは今年最大のグレーリノ・大きな問題を起こすにもかかわらず軽視されている材料である可能性が高そうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)