米中合意期待がまたしても剥落する動きとなって107円台中盤まで上昇したドル円は昨日のロンドンタイムに大きく値を下げ再度106円台に突入する動きとなりました。
NYダウも一時300ドルを超える下落となったことからドル円も下値を試すリスクオフの動きが想定されましたが、どうも下方向に動く気配が感じられず、結果的に107円台を回復し再度上値を狙う動きになっています。
米国商務省は中国の監視カメラメーカー二社を米国との取引禁止にするブラックリスト入りを行っていますが、これが米中閣僚級会議の直前ということだけあって中国側はかなりの反発を見せており、訪米団の滞在期日を短縮するといった報道も出たことから一旦は相場が下落する動きとなったわけですが、ドル円のほうは素直に反応せずに上を試す動きになっています。
ただ、さすがに107円中盤からはかなり値の重そうな動きになってきていますので今後これがどういう動きになっていくのかが気になるところです。
■ドル円15分足
為替相場は時としてこうした不可解な動きをすることがありますので、文句を言っても仕方ないわけですが、とにかく上昇したがっている相場には逆らうことはできないのが正直なところです。
英国のEU離脱案にメルケルが反対意見
一方英国のEU離脱案に対してドイツのメルケル首相が事実上の反対意見を表明したことが明らかになりポンドのは一斉に売られる展開となっています。
電話で会談したボリスジョンソンはBREXIT合意は本質的に不可能であると発言しており、ここからどういうプロセスを経るのかよくわかりませんが結果的に合意なき離脱が一段と現実のものになりつつある状況が迫ってきています。
もともとたいした案が用意されているわけではないわけですから土壇場で交渉しても状況が大きくプラスに展開する可能性はないわけですが、それがいよいよ現実のものになってきたというのが正直なところなのでしょう。
英国議会ではEUの意向とは別にEU離脱を延期することが法案として決まっているわけですからどういう条件が整ったときに合意なき離脱になってしまうのかは今一つよくわからないところもありますが、この話がでるたびにポンドが売られることは容易に想定できる話です。
パウエル議長は事実上のQE4を示唆
さらに講演に登場したパウエル議長はどうやら形を変えたQEを11月から再開することを決めたようで、FRBとしては絶対QEとは呼びませんが、先日の短期のレポ金利が上昇したことへの対策を含めていよいよ緩和の実施に腹を括りそうな展開です。
こうなると米株の方は中央銀行バブル相場が温存する可能性もではじめてきており、ここからの相場動向の変化に注目が集まることになりそうです。
これで一定のトランプ対策もできることから年末までの相場対応も確実になることが予想されます。このようにまったく異なる材料が同時並行で相場になだれ込み始めてきており、お互いの相関性間ありませんからここからの相場が何にもっとも影響をうけて動いていくのかが非常に重要になりそうです。
米中の対立の問題はこのコラムでもお話しておりますようにアルゴリズムの一過性の動きでは語れない部分がありますが、FRBの10月末からの事実上のQE実施は相場に与える影響がもっとも大きくなりそうで、今回はパウエル議長の講演に飛び出してきた内容だけに詳細がどうなるのかは不明ですが、相場はこれをもっとも注目していくことになるものと思われます。
なんとしてもQEと呼ばないというのがFRBの意地を感じさせますが事実上は緩和措置へのシフトということになりますので株と債券の相場のここからの動きに注目していきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)