主要国中央銀行の政策決定会合を経て為替相場はほぼ材料出尽くしの感が強くなっており、次のテーマが登場するのを市場参加者総出で待っているかのような動きになってきています。
本邦勢は週末が三連休ということもあって手仕舞いが出やすかったとも言えますが、米中の通商交渉にかなり楽観的な雰囲気が漂っていたのが週末、中国が派遣団のモンタナ農場視察を注視して帰国を早めたことから株もドル円も売りが加速しました。
週末の手仕舞いも手伝って107.500円割れ一歩手前までドル円は下落して週の取引を終えています。
どうも9月に入ってからアルゴリズム主導も含めて米中通商協議に対して妙に楽観的な結果を期待する雰囲気が高まり、リスクオンムードが強まったわけですが、米中の交渉の実態などが露見しはじめると必ずしもリスクオンではないことも見え隠れし、結局リスクオフへと逆戻りする相場が示現しはじめています。
市場参加者とは別に無理やりアルゴリズムがリスクオンとリスクオフを演出しているようにも見える相場ですが、AI主導のマーケットというのは今後こうした状況がさらに強まりやすくなるのかもしれません。
■ドル円1時間足
ドル円はFOMC後108.500円を試しにいったものの二回やっても抜けきらずその後は何度か108円まで戻りましたが結果的には維持していることができなくなり、107円台中盤まで押し戻されたことがよくわかります。
とはいうものの、現状では方向感がある話ではなく一旦トレンドが消えている状況ですから、ここから再上昇するのか106円方向に下落するのかは実際に相場が動いてみないことにはよくわからない状況にあります。
またテクニカル的には大幅下落とはいかないにしても下方向へのリスクは高まりそうで、月末は国内半期末ということもあって円転需要もでてくることから一定の円高に進む可能性を考えておく必要がありそうです。
トランプは本格的に中国を締め上げる可能性も
ところでブルームバーグの記事に、トランプ大統領のアドバイザーであるハドソン研究所のセンター長であるマイケル・ピルズベリーしが対中両国の交渉が合意に至らない場合には今後対中圧力を強化する可能性がたかく、関税率が50%や100%といった状況に引き上げられる事態も十分に可能であるという発言をして非常に注目を集めています。
トランプによる米中の貿易全面戦争は「はったり」という見方は間違っているとはっきり述べている点は見逃すことができない状況で、単なるブラフとして言っているのはないことも見えてくる状況です。
以前のコラムでも触れている通り、まだ大統領選まで1年以上の時間があるわけですから、対中関税を引き金にして米株が2割や3割程度下落するという厳しい状況に追い込まれても、QE4を実施すれば来年の夏までには相場が回復し再度上昇軌道に乗る可能性は高く、トランプはこちらを狙っている可能性がかなり高まっているように思われます。
たしかに利下げはそれなりの効果はあるもの、もともと「2.5%」程度しかなかったものの下げ幅は限られています。
またここから先の大幅緩和を実施する場合には相場下落などの大義名分が必要であることも事実で、足元のような予防措置などを謳って利下げをするのにはもはや無理がある状況ともいえます。
足元の米国株式相場は指数こそ高値を維持していますが市場参加者がかなり限られており、しかも取引銘柄も限定的で決していい内容の高値相場ではないことから考えても年末に向けて株価が一段下げるというシナリオを考えておく必要がでてきているように思えます。
とくに一定の結果がではじめるのは中国の国慶節以降になることでしょうから、ここ当面はモラトリアム的な相場が続くと思われますが、その先にかなり厳しい状況が待ち受けているリスクが高まりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)