先週末降ってわいたようなサウジアラビアのサウジアラムコの石油精製拠点2か所へのドローンと見られるものによる攻撃は週明けのアジアオセアニアタイムに案の定の大きな窓開けを伴って影響を与えることとなりました。
しかしニューヨークタイムには意外にドルが強含み、結局開けた窓を1日で埋め戻す形となっています。米国はこの攻撃の陰にイランがいるのではないかという疑いを強めており、高官の発言にもそうしたニュアンスがにじみ出ています。
トランプ大統領自身はイランとの戦争を望まないと口にしており、少なくとも米国とイランがいきなり戦い出すことはなくなっているように見えますが、サウジアラビアがどうでるかは別問題で、常にサウジとイランは代理戦争のような形でいがみ合ってきていますからここから何が起こるかはまだよくわからない状況にあることは確かなようです。
石油ショックとなると昭和の時代は円安に向かったものですが、まぜか複合的要因をともなってリスクオフは円高になり、それも今回の動きをみていますと軽微なもので石油の問題はあまり市場に影響を与えなくなっていることを強く感じさせられます。
石油価格はもちろん上昇だが過去の石油ショックの時とは異なる状況
ひと昔前であれば中東で戦争の煙が上がっただけで原油価格は跳ね上がったものですが、今回もたしかにいきなり15%程度は上昇しているものの昔に比べればそれでもかなり落ち着いた状況でパニック状態にはなっていないことにあらためて時代の変化を感じる次第です。
米国はたしかに自国でシェールオイルを採掘できることから70年代などとは大違いの状況ですが、それでもガソリン価格に影響を与えることは間違いなく、とりあえず備蓄原油で対応することをトランプがいち早く決めています。
サウジの減産必至の状況が景気にどう影響を与えることになるのか、インフレのドライバーになるのかはまだ1~2日程度が経過した中でははっきりわかりませんが、石油価格の上昇はとかく物価に影響するだけに各国の中央銀行もこれでCPIが高まるようなことになった場合には簡単に利下げができなくなる可能性もあり、とくにここからFRBがどう対応していくのかが注目されることになりそうです。
逆に原油高こそ世界経済の成長を抑制する材料になるのでさらなる緩和が必要になるという見方も当然市場には残っており、この材料は利下げ促進と抑制の両面に効いてくる可能性が出始めています。
トランプはさらなる利下げを声高に主張
トランプ大統領のほうは何があってもほら見たことかとばかりFRBに利下げを迫るツイートを一切やめていませんが、まともなFRBメンバーがいればそういう話にはならない可能性が高いのは当然のことで、とにかく9月のFOMCは利下げせざるを得ないとしてもここから先についてパウエル議長が明確に利下げを示唆するとは思えない状況になりつつあります。
こうなると次回FOMCでは政策金利発表自体よりもその後のパウエル記者会見での同氏の発言が非常に相場を左右させることになりそうです。
その後19日には日銀政策決定会合も開催されますが、こちらも石油の影響は同様のものでとくに石油価格の上昇は国内の物価にかなり大きな影響を与えるだけに迂闊にマイナス金利を深堀して大丈夫かという問題が出てきそうです。
オーソドックスで伝統的な経済手法ではありえないような発想が最近の金融政策に登場することもありますので、相場の先行きを断定するのは非常に危険ですが、中央銀行の対応の仕方を見極めることが重要になりそうです。
次回FOMCの結果は日本時間の19日午前3時から、パウエル議長の会見はその後3時半からに予定されています。
(この記事を書いた人:今市太郎)