8月最終週はトランプ大統領が中国と電話をしたとか協議が継続するとかいったはっきりとよくわからない話から株も為替も買い戻されるという不可解な動きが続くことになりましたが、とうとう9月1日事前の予告通り米国は中国に対して制裁関税「第4弾」を発動し中国サイドも即日報復の関税を実施しています。
この二国間の関税率は実に平均20%を超す形になっており、実際の景気に相当ネガティブなインパクトが出る可能性は極めて高く、本格的に危険な状態に突入してきたことがあらためて感じられる状況です。
株価に与える影響も絶大なものに
8月一旦大きく下落して戻してきた米株市場ですが、本来は秋から年末に向けて相場は上昇するのが一定のアノマリーになっているものの、今年は本当にそういう動きになるのかどうかかなり注意が必要になってきているようで、とくにここからもう一段大きな下げがでるリスクにも相当注意すべき状況になりつつあります。
この高率関税はまさに1930年代のものと似た状態で過去の事例から考えれば景気が悪化するのは間違いなく、しかも米中双方ともそれなりの損失を被ることになるのは間違いなさそうで実態経済に相当な影響を及ぼすことが懸念されるところです。
対ドル7.3人民元を超え始めれば必ず周辺国通貨危機に
為替の領域でいいますと対ドルで人民元がここからさらに下げ始めると7.3を超えるあたりから近隣国への具体的な影響が懸念されるところです。
もちろん1997年あたりのアジア周辺国の状況と比べれば大きくファンダメンタルズも変化していますから、まったく当時の通貨危機の再来ということはないと思われますが、実際に周辺国への影響は出始めている模様で2015年8月のような暴落が瞬時に起こるとはいえませんが、かなりリスクは高くなりそうな状況です。
どうもこうした市場へのネガティブな影響への織り込みというものがあまりしっかり感じられないのが正直なところで、9月の相場は想像以上に下落する危険性があることをかなり意識しておく必要がでてきているようです。
とくに米債市場はやたらと債券金利が下落しており、逆イールドが頻繁に示現するようになっていることから、いつということまでははっきり申し上げられないもののリセッションは確実に近づいている状況に見えます。
大統領選の前に株価が大きく崩れた場合これまで多くの現職米国大統領は再選に負けてきていることからトランプも必死で相場を維持することを考えることになるのかもしれませんが、一方で米中での貿易戦争を激化させているのがその大きな要因だけに果たしてここから株価を維持できるのかどうかについては相当疑問を感じる状況に陥りつつあります。
先のことは全くわかりませんが、少なくともこの9月から10月にかけての相場になんらかの変調がみられることになるかどうかに非常に注目していきたいところです。
このまま何事もなく12月まで相場が復調気味に上昇するとはなかなか考えにくいところに差し掛かっているのが正直なところではないでしょうか。
9月15日になるといよいよリーマンショックの暴落から丸11年が経過することになります。過去の米国経済を見てもだいたい7~8年に一度大きな相場の調整が起きているにも関わらず今回は120か月以上も景気の拡大が続くといういわば異常事態が延々と続いています。
中央銀行が仕掛けるバブルでは相場の下落というものがまったく許されなくなっていますが、それこそがダイナミズムを打ち消す異常な動きであり、かえって強いリスクを感じさせられます。9月第一週の今週の相場はそうした先行きを占う時間帯になってきているのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)