23日のジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演は特別市場に示唆を与えるものではなく利下げを確約する様な発言もなかったことから相場の反応も殆どなかったわけです。
しかし、それに先立つタイミングで中国が報復関税750億ドルを実施することを突然発表し、トランプ大統領がツイートでそれに応戦する形となったことからジャクソンホールのイベントのノイズをすべてかき消すような展開となってしまいました。
株式市場はそれよりも中国とトランプの関税合戦の応酬を猛烈に嫌気することとなりNYダウは全く戻りを試すことなくずるずる下げて後場の終わりには700ドル以上の下落を見たものの、多少戻して600ドル台前半の下落で週の取引を終え、週明けはなんとか下げ止まる展開をみせていますが、特段上昇する材料はなく引き続き不安定に推移している状況です。
ドル円のボラティリティが激しい状況に
一方為替ではドル円は案の定週明けから大きく窓を開ける展開で東京タイムが始まる前の時間帯に大きく下値を試す動きとなりましたが、東京勢が出てきてからはショートカバーが大きく進む展開となりました。
月曜日はロンドンがサマーバンクホリデーであったためあまり大きな動意はみられませんでしたが、NYタイムに入ってからはトランプ発言にアルゴリズムが過剰に反応し中国との交渉再開といったメディアのヘッドラインが躍ったことから瞬間的にストップロスをつける形でNYタイムの入り鼻に106円台中盤まで跳ね上がるというかなり乱暴な展開になりました。
アジアオセアニアタイムの序盤に104.400円まで下押ししたその日の夜に106.400円まで跳ね上がるというのもすさまじい上下幅ですが、米中の交渉の行方がすっかりよくわからなくなったことから要人発言の細かいニュアンスだけに相場が振らされる展開となってきています。
※ドル円1時間足
正月相場のトラウマか
こうした激しく戻りを試す動きがドル円に出ているのは今年の正月3日のフラッシュクラッシュ後大きく買い戻されたことが影でかなり影響しているのではないかといった見方がかなり濃厚ですが、今回105円を明確に下回ったことからこれでピークアウトということにはならなさそうでまだ下値を模索する余力はありそうな状況です。
ただ、下落するとしても相当な上下動を伴って下値を試すことが予想されることからただ売って待っていればいいという簡単な相場にはならなさそうです。
また実態が伴わない希望や気分に基づくトランプのツイート発言やメディアへの返答が相場を大きく揺さぶる展開になっており、とくに為替がそれによって大きく上下に振らされる展開になっているのが非常に気になります。
足元の相場状況は、この先の米中交渉の見通しが全く立たないことから延々と続きそうな気配濃厚でちょっと市場に心地よい要人発言があればドル円は大聞く買い戻され情報が誤報となればまた売られるという消耗戦を長期間繰り返すリスクも高まりつつあるようです。
またこうした状況から9月のFOMCではさらなる利下げを求める市場の催促相場も強まりそうで、債券金利がここからさらに下がるようであればドル円はどうしても円高方向に動くリスクを考える必要がでてきそうです。
いずれにしても一つの材料で一方向だけに動く相場ではありませんから、利益がのったところはこまめにリカクして積み上げているといったトレードを構築していくことが需要そうで、長くポジションをひっぱりすぎない回転のいいトレードを心掛けることが重要な一週間になりそうです。
ただドル円としての方向は明らかに下であり、一旦戻しても下落が収まったと考えるのは早計なようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)