米国の関税攻撃の対抗手段として中国が為替に手をつけることになるとは市場のほとんどの参加者が想定していなかっただけに人民元安攻撃はかなり大きなインパクトを与えることになったことは間違いなさそうですが、それとともに中国が打ち出してくるのではないかとして危惧され始めているのが日本円にして120兆円を保有する米国債の売却です。
中国は2013年以来米国債の保有額を減らしつつありますが、これまでは現実味のなかった米国債の売却がいよいよ本当に実施されるのではにかという状況になってきたわけです。
金の保有率を高めてきた中国
中国政府は今年5月に16トン、6月に10.3トン購入しておりこの半年ではなんと74トンも増やすほど急ピッチで金に資金をシフトしています。
また、中国はほぼ年間400トンほどの金を生産していますが、鉱山から得られた自国生産の金はすべて国庫に納められているものとみられ、世界的に公表されている金の保有額では第7位となっているものの、実際にはそれよりはるかに多い金を保有しているではないかとされています。
これを考えてみますと、やはり中国は脱米ドルを目指している可能性はかなり高そうで、すでにドル離れを十分に模索して準備していることが窺われます。
問題の発生は売り方次第
通常の米国債市場であれば、安全資産である米債を求めて定常的にそれなりの需要があることから足元の米債の価格は上昇気味で、ご存知のとおりその金利は大きく下落傾向にあるわけですが、中国が保有国債を一気に売り始めれば当然需給のバランスが崩れることから米債の価格は下落し金利が一気に上昇することが容易に予想されます。
この国債金利の上昇は米国債の中だけの話にとどまらず、ジャンク債や社債市場にもかなり大きな影響を及ぼすだけにどのぐらいの勢いで売りを出してくるか次第で市場への影響は異なるものになりそうです。
中国が売っているかどうかは当面はあくまで市場の状況を見ながら判断することになると思われますが、急激に金利が上昇するようであれば株価にもそれなりの影響がではじめますし、本当に米中の深刻な金融戦争が勃発してしまうだけにこれまで以上の注意が必要になりそうです。
とうとう落としどころが見えなくなってきた米中戦争
このようにこれまではさすがに現実のものにはならないのではと思われてきたことがすべて想定範囲内に含まれはじめてきたことから、計り知れないようなダメージが相場に現れるリスクが高まりつつあります。
とくに米国は中国を為替操作国に認定してことですでに関税がかけられている状況にさらに税率を高めることになるのか相殺関税を適用して猛烈な高率関税を特定分野にかけてくるのかといった具体的な制裁措置の中身がまだよくわかりません。
逆に中国がそれにどう対応するのか、本当に米債を売り浴びせることで対応するのかどうかも正直なところどこまで現実のものになるかはここからの両国の状況をつぶさに把握する以外には判断の手立てがない状況に陥りつつあります。
また、双方ともにどう歩み寄るのか、あるいは2020年の大統領選挙までこの調子で徹底抗戦するのかもまったく見えなくなってきています。
既存のメディアでは大騒ぎにはなっていませんが、実は現状は相当クリティカルな状況でとてつもなくネガティブなことが起きることも相当覚悟して相場に臨む必要がでてきていることを感じる次第です。
まさに想定外の夏相場が展開されはじめており、しかも現状はまだなんら解決のついていないイニシャルステージであることを理解しておかなくてはならず、ここから何が起きるかわからないということを肝に銘じておく必要があります。
(この記事を書いた人:今市太郎)