このコラムでは何度もご紹介している世界最大のヘッジファンドのファウンダーであるブリッジウォーターアソシエイツのレイダリオが久々にLinkdInにパラダイムシフトと題した寄稿を行って話題になっています。
FOMCまで相場が動きそうもないので今回はこれについてご紹介したいと思います。詳細はこちらにアクセスされれば直接お読みいただけます。
レイダリオが定義するパラダイムとは・・
今回はこの中身でポイントとなる部分をご紹介したいと思います。この文書によれば概ね10年ごとに市場は機能の仕方を変化させるとしており、それぞれの時代のモードのことをレイダリオはパラダイムと呼んでいることがわかります。
レイダリオの分析ではこの10年ごとに訪れるパラダイムに殆どの投資家が順応してしまい、それをもとにして未知のこと、未来のことを推測、予測しはじめてしまうことから往々にしてその予測は行き過ぎた結果になってしまい、結果として新たに発生するパラダイムシフトはそれ以前のパラダイムにおける市場の在り方とは全く反対の在り方を示現する様になると見立てています。
つまり足元のパラダイムに慣れすぎてしまうと異なる発想をすることができなくなり、新しいパラダイムへと移行したときに逆に想定以上の振り幅を示現してしまうとみていることがわかります。
過去10年に及ぶパラダイムとは
今回のコラムで非常に興味深いのはレイダリオがここ10年以上続いている2009年からのパラダイムについてその要素を列挙していることです。
それによるとこの10年以上続くパラダイムは以下のような要素によって構成されていると規定しているのです。
1)各国中央銀行が恒久的に続けられない量的緩和を実施した時期
2)金融緩和が資産買い入れと金利低下という2つのルートで結果的に資産価格を押し上げる事態を引き起こしている
3)利下げはゼロ金利制約となり、その結果量的緩和は効果が低減してしまった
4)資産価格は上昇し、将来のリターンは低下、これがさらなる資産価格上昇の足かせとなってしまっている
5)今回の金融緩和がマイナス利回りを生み出し、結果として人々は金など代替的なマネーへとシフトしはじめているこうしたここ10年のパラダイムに対してレイダリオはまったく新しいパラダイムがもうじきにやってこようとしていると示唆しているわけです。
新たなパラダイムシフトがおきるきっかけについて
レイダリオが予測する次のパラダイムシフトが起きるきっかけは投資に対する実質的なリターンがあまりにも低くなりすぎて債務を保有する投資家がそれを望まなくなるときではないかとしています。
実際に足元では債券の金利が下がりすぎてもはや長期債を購入する妙味などもなくなっているわけですが、それ以外の市場でも同様にリターンが低下するときが新しいパラダイム形成のきっかけになる可能性があるということです。
また国の債務や企業の債務に引き当てるマネーが巨額になりすぎてこれが大きなスクイーズを引き起こすと示唆しています。彼は新たなパラダイムへの対応策として金への投資を勧めている点が非常に気になるところです。
実際にレイダリオが言うような形になるのかどうかはまったくわかりませんが、2008年のリーマンショックも当てている人物だけに気にしておいて損はなさそうで、果たしてこのニューパラダイムがどのタイミングで到来するのかが非常に注目されるところとなってきています。
今年は既に半年過ぎているわけですが、ここからの残りの半年が何事もなく終わるかどうかはかなり微妙になってきているのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)