トランプ米大統領は2日、セントルイス地区連銀のクリストファー・ウォラー執行副総裁と欧州復興開発銀行(EBRD)米国理事のジュディ・シェルトン氏を米連邦準備理事会(FRB)理事に指名する意向をツイッターで示しました。
しかし、その直後から米国債の金利がさらに下がるという動きが示現することになり市場の関心が非常に高いことを示す結果となっています。
トランプ大統領はFRBパウエル議長の政策に対して延々と批判を続けていますが、欠員になっていたFRB理事を自らの発想に近いものを投入してきていることは明らかで今後パウエル議長のクビのすげ替えがあるのかどうかが非常に注目されることとなってきています。
マリオドラギを雇いたいと公言するトランプ
トランプはとにかく米中貿易戦争など他国への関税攻撃で下落が予想される株価をFRBの金利引き下げ政策でなんとか下支えさせたいと考えているようで、パウエルに引き続きプレッシャーをかける動きを続けています。
ツイッター上でも今年退任するECB総裁のマリオドラギを雇いたいなどと公言しており、パウエルへの脅かしなのか本当に交代させたいのかなかなか真意が見えない状況になってきています。
また市場ではもっともハト派的なカシュカリミネアポリス地区連銀総裁と交代を画策しているのではといった憶測も飛び交い始めており、パウエル議長としてはFRBの独立性は訴求しつつもどこまでトランプに忖度した政策を打ち出すのかが注目されることになります。
また新任のFRB理事がトランプの意向にあわせた票の入れ方をすれば少なからず利下げの可能性が高まることになりここからのFOMCの運営状況が非常に注目されることとなってきています。
市場はブラード総裁のけん制発言を全く意識しない状況
最新のCME FedWatchを見ますと依然として7月のFOMCの利下げ確率は100%で完全に市場は7月に利下げが行われることを織り込み済みの状況はまったく変わっていません。
また利下げ幅については0.5%と読み込んでいる確率は6月時点よりもさらに高まっておりすでに31.8%となっており市場の利下げに対する織り込み度は日増しに高まる状況となっています。
セントルイス地区連銀のブラード総裁は7月のFOMCで0.5%の利下げを期待するのはやりすぎであると市場をけん制する発言をしていますが、市場は一時的に反応したものの、すっかりもとに戻っていることが窺われる状況です。
本来経済指標が悪いとそれを嫌気して相場は下げるものですが、逆に足元ではFRBの利下げが加速することを期待して株価は上がり、債券金利は低下するという不思議な動きになってきています。
6月分の雇用統計も数字が悪ければ利下げ期待が進むという状況ですから結果に対する相場の動きもこれまでとは変わる可能性があり、注意が必要になってきています。
Data CME
次回FOMCは7月末で日本時間としては8月1日午前3時に発表されることになるわけですが、市場の織り込みに対応するためには最低0.25%の利下げは行わなければならない状況に陥っており、一旦利下げが開始されればさらなる利下げを要求して催促相場が展開する可能性が高まります。
逆に万が一でも利下げが7月に行われないとなると株式市場を中心に大きく相場が下落する可能性がありますし、さらに買いすぎの米債市場の金利が反転上昇することも十分に考えられる状況で、どちらにしても7月のFOMCを境にして相場が大きく動き始めるリスクに備える必要がありそうです。
本来FOMCは独立して政策を考え提示する場だったわけですが、最近ではすっかり市場から株式相場だけを気にして政策を行っていることがばれてしまっているうえにトランプからプレッシャーをかけられているのが丸見えの状況ですから、かなりやりにくい状況になっていることは間違いなく、非常に難しい状況に陥っていることがわかります。
(この記事を書いた人:今市太郎)