G20大阪会議ではトルコのエルドアンとトランプの会談も注目されていたはずでしたが米中の会談に目が行きすぎ、しかもその後トランプ=金正恩の板門店会談が行われたことからすっかり影の薄い状況になってしまいました。
エルドアンサイドはもともと米国からのミサイル購入を考えていたもののオバマ政権時にそれがうまくいかなかったが故のS-400購入であることを強く訴求したようですが、制裁解除という話はとうとうトランプの口からも出なかったのが実情で、週明けのトルコリラは一旦上昇はしていますがこの状態が今後も続くのかどうかははっきりしないところにあるようです。
この会談で決定的な状況には陥っていないことから確かに足元では価格は戻していますが、あえてこのタイミングにリスクをとりに行く必要をまったく感じないのが正直な印象です。
会談後エルドアンはトランプからは制裁は行わないという言質をとったと説明していますが、事実かどうかはよくわからない状況です。
NATOのレーダー網でロシア製ミサイルを飛ばすのはあり得ない選択
トルコがこのロシア製ミサイルS-400を導入した場合EUの同盟国としてNATOの軍事レーダー網を使って打ち上げを行うことになるわけですが、そもそもNATOはロシアを強く仮想敵にしているわけですからそこにロシア製ミサイルを導入するという話はトランプが納得してもNATO加盟国が全く納得できない話で、そう簡単に収まる内容ではないことだけは確かな状態です。
現在トルコはかなり経済的にも厳しいところにあり、そこにさらなる制裁を課せられた場合にはさらに厳しい状況に追い込まれることは間違いなさそうで、ここからの動きには相当注意が必要です。
為替の視点でみるとトルコリラを扱うメリットが感じられない
とにかく国内ではトルコリラのロングでスワップをとろうとするトレーダーが実に多いのには驚かされますが、冷静に国内の店頭FX業者のスワップを見ますとかなり政策金利が上昇したのに付与されるスワップは決してそれに見合う形になっていないことが気になります。
つまり横並びで適当にスワップがついているだけで政策金利の上昇に正確にリンクしておらず、その割に取引に伴うリスクのほうだけが格段に大きくなっている点がなんとも言えない状況です。
ドルトルコリラやユーロトルコリラに比べますと取引に必要な資金が非常に限定的であることに加え、ほかの低金利通貨よりはたしかにしっかりスワップがつく印象があることから延々とロングにして売買している方が多いものと思われます。
価格が戻っている足元の状況は一旦EXITするよい機会になっているともいえ、ここから続けて取引をされるのは決してお勧めできないものがあります。
世界的金利安競争が再燃しているわけですから、この時期にしっかりスワップがつくという国は相当リスクが高いことだけは間違いありません。
自国の国民が必死にドルやユーロ、ビットコインに逃げている最中に目先のスワップが多少つくからというだけの理由でトルコリラを買うというのはかなり理解に苦しむディールです。
ゼロカットシステムでも導入されている業者ならいざ知らず、大きな下落で証拠金のほとんどを失うだけではなく場合によっては追証さえ負担させられるというのは危な過ぎてもはや選択肢にはなっていないところにあると感じる次第です。
もちろん何を取り引きするのも個人のトレーダーの自己責任ですから、止めることはできませんが、冷静に考えてみたときに今トルコリラを扱う必要があるのかどうかについてはかなりよく考えることが重要なのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)