G20を前にしてほとんど動かない市場が継続中ですが、金価格はその中にあっても上昇を続けており、ドルベースではすでに1トロイオンス1400ドルを突破する勢いになってきています。
Data Tradingview
金価格というのはとかく主要国の中央銀行が秘密裏に介入して上値を抑える傾向があるわけですが、ここへきて明確に1400ドルを抜けたことでこの先1600から1700ドル程度まではすんなり上昇するのではないかといったかなり楽観的な見方も広がりつつあります。
今回の上昇の動きはあきらかにこれまでの状況とは異なってきていることが感じられるだけに金を買わなくてもこの相場の動きはつねに注視する必要がでてきていることがわかります。
こうなると逆相関の動きをするドル円はここからさらに下落する可能性が高まるわけで、金価格の推移にも注意をすべき時間帯に差し掛かってきているようです。
地政学リスクか、全体的な市場のリスク回避か?
金価格ここまで上昇するというのは株や債券からさらに資金が逃避してより安全な資産に向かっているともいえるわけですが、ビットコインなどの上昇をみていますと、どうも本当に資金が逃げ込もうとしていることがよくわかります。
金価格の足元の高騰も、金利水準低下予想などの影響に加え、中東情勢の緊迫化や英国のブレグジット問題、香港の大規模デモ、中国やメキシコとの貿易摩擦などの地政学リスクを受けて、リスク回避の一環としての動きの表であるとみる向きが多くなっていますが、ほぼ間違いない状況のようです。
最近では各資本市場間の相関関係というものが大きく崩れつつありますが、その中でも相変わらず金とドルの逆相関はワークしており、とくにドル円は金価格の上昇局面では下落しやすいだけにこの先金がどのような動きを示現してくるのかが非常に気になる所です。
リスク回避となると円買いも進みやすくなる
基本的に市場はリスク回避となると円買いが強まる傾向がありますからドル円もどうしても円高になりやすいことは間違いありません。ただ、最近面白い動きになっているのが人民元の下落局面にドル円を買うことでヘッジをかけるという手法を持ち出してきている投機筋の存在です。
これまで人民元の下落といえば当然円高にシフトしやすかったのですが、まったく逆さまのヘッジをかける向きがいるというのはちょっと驚きです。
足元では米国の利下げが進むというただそれだけの期待感から過剰に米株が買われ、ある意味ではメルトアップ相場なのではないかとさえ言われるようになっていますが、金やビットコインへの資金の流入はそうした流れとはまったく異なる視点での資金の動きの顕在化とみることもでき非常に注目される部分でもあります。
相場の著しい変化が生じる前触れとしてはこうしたこれまでにないような動きが明確なることが多いわけですが、我々はそれが何を意味するのかいまひとつよくわからずに受け流していることが多い気がします。
実際だれがどのようにして買っているから値が上がるのかという構造的な部分を俯瞰からすべからく眺められているわけではないですから、本当のことはだれにもわからないのが実情といえますが、ビットコインの上昇も含めて何か地殻変動が起きている可能性はつねに意識しておく必要がありそうです。
現実の相場を見ていますと動きが乏しくあまり大きな変化を感じませんが、実は水面下ではなにかが動き出していることもありそうで、あまりのんびり構えていては商機を失うことになりかねないため、それなりの緊張感をもって相場に接することが求められそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)