FOMCでは大方の予想通り現状維持で利下げは起きませんでしたが、パウエル議長があきらかに市場を意識して先行き利下げを示唆する様なそぶりを見せたことから米株は上昇、NYダウは史上最高値を更新しかねない勢いになってきています。
これまでにもこのコラムで書いたように利下げの見込みが強まったというだけでここまで株価が上昇して本当にいいものなのかという疑問はありますが、それが現実ですから受け止めざるを得ない状況です。
債券金利はいよいよ下落加速
米株とは裏腹に債券金利はさらに下落し米10年債はというとう2%を常態的に割る動きを見せ始めています。
下のイールドカーブはいよいよ逆イールドが進行して2年債と10年債がフラット化もしくは逆イールドになるのも夢ではなくなりつつあります。
Data FT
6月最終週の週末に向けてのG20 とそれに絡む各国の首脳会談の結果がどう相場に影響を与えるかはまだ依然として大きなリスクとなっているわけですが、7月は例年米株は比較的堅調で株高に推移することが多く、本邦は参院選があるため無理やり株価を下げさせない動きがまた示現してくることでしょうから意外のここからの株式市場は高めに推移しそうな状況になってきてます。
問題はいつFRBが利下げするのか
意外なのは7月のCME Fedwatchの利下げ確率は今回のFOMCを経てもそれほど高まりをみせておらず、34%強にしかなっていない点が注目されます。
Data CME
どうやら9月の利下げを想定している向きが多いようですが、9月は30日がFOMCですからほとんど10月ということで、そこまで本当に市場が待てるのか、また催促相場が示現するのかが注目されるところです。
21世紀に入ってからの二回の大きな相場暴落を振り返りますと、2000年のITバブルの崩壊時も2008年のリーマンショック時も直前までは株価はかなり堅調に推移し、FRBが利下げに転じた直後からおかしくなりだしています。
この二回ともにイールドカーブは逆イールドもしくはフラット化を示現し、FRBの利下げによって短期金利が下落したことからスティープ化、つまり曲線の正常化が進む段階でいきなり相場は暴落に見舞われています。
今回もそれと同じことが起きるかどうかわかりませんが、二度あることは三度あると考えたときにはいよいよ利下げが実施された直後が時限爆弾の破裂になりそうで、相当な注意が必要になりそうです。
9月といいますとリーマンショックからちょうど11年経過するタイミングになりますから、たしかに信憑性は高まりそうですが、利下げを行わなくてはならないほど先行きの見通しが暗いのに闇雲に株だけ上昇するというのはどうも納得のいかない動きでここから市場最高値をどんどん更新するような動きが米株に登場するのかどうかもかなり気になるところです。
今のところドル円は債券金利の低下の方に完全にシンクロしているようですが、どこかのタイミングで株価に連れて上進するのかどうかも注目されます。
ただし、株価が大きく下落するタイミングでは間違いなくドル円も下落することになりますから、短期売買ならば構わないでしょうがロングのとりかたにも注意が必要になりそうです。
依然として米系の投機筋はこの8月以降相場になにかあるのではないかとみている向きが非常の多いようです。一つの変調を確認するツールとしてはやはり米国のVIXが突然上昇を始めることで、これがでた場合は逆イールドの復調よりもこちらを重視すべきではないかと思われます。
決定的な状況変化までまた一段と時間が近づいてきている印象が強くなりました。
(この記事を書いた人:今市太郎)