ECBのドラギ総裁が経済状況次第でさらに政策金利の一段の引き下げと副作用抑制措置は、依然としてECBのツールの一部であるとポルトガルのシントラで開催されたECBの年次会議で述べました。
このことから、ロンドンタイムにユーロが大きく値を下げる動きとなりましたが、トランプ大統領がこの発言にかみつく形でユーロの下落で欧州は不当に容易に米国と競争できるようになり、欧州は中国などと同様、長年にわたりこうしたことをしてきたとツイートで批判したことから、いよいよ中銀緩和による通貨安戦争が本格的に勃発するのではないかという見方が強まりつつあります。
これまで他国の中央銀行の総裁発言をあからさまに批判したことはなかったトランプですが、いよいよ2020年の大統領選をにらんで、ドル安政策を推進するために余分な人物はECB総裁であろうと徹底排除する構えであることが明白になりつつあります。
行き過ぎたアメリカファーストに市場がどう反応することになるのかが注目されることになりそうです。
これまで日米欧の中央銀行は互いに緩和にしのぎを削るよりはむしろ連携して緩和措置を拡大することで、経済の落ち込みを阻止する動きをとってきたわけですが、いきなりトランプがECB総裁の発言を攻撃したことでこの連携がこの先どうなるのかも非常に注目されることになりそうです。
単なる緩和競争では中銀バブル相場は長くは続かない
アメリカさえよければ後はどうなっても構わないというトランプの発想は相当これまでの同盟国との関係を崩すことになってきていますが、もはやお構いなしの状況に陥っていることは間違いなさそうで、為替相場に言及する発言がこれからますます多くなるとかなり相場は荒れそうな気配になりつつあります。
とくに緩和政策が競争的に行われることになってしまうと勝者と敗者が生まれるといういびつな関係が構築されるだけに、これまでの中央銀行バブルがうまく維持できない状況に陥ることもありそうで、結局だれも出口から出られないまま主要国の中銀はさらなる緩和措置へと競争的にその動きを加速させていくというかなりしよろしくないところに進んでいくことになりそうです。
トランプはパウエルの首のすげ替えも検討か
また一部の報道ではホワイトハウスがパウエルの更迭が法的にできるかどうか検討しているといった内容が飛び交ったことからFRBの人事にさえトランプが乗り出すことになるのかどうかが注目されはじめています。
いまのところ今回のFOMCを睨んだけん制発言なのか本当に更迭を考えているのかははっきりしない状況ですが、うちも外もすべての中央銀行を的にまわしてなんとかドル安を示現させようとするトランプの動きに相場は本当に好感するのかどうかも非常に気になる所です。
月末にはG20 も大阪で開催されますが、どうもこの調子でいきますとまともな共同声明などが出る可能性はかなり厳しそうで、むしろ各国間で猛烈な軋轢ができてしまうことのほうが心配になる状況となってきました。
習近平国家主席はトランプとの電話会談で一応来日してG20には出席する様で株価は大きく上昇していますが、果たして会談になんらかの成果があるのかどうかは別問題で逆に成果がでなかったときに大きな売りがでてくるリスクを考えておく必要がありそうです。
相場はすっかり政治にかき回されているだけにとにかく方向を断定せずに結果をしっかり見たうえでエントリーしていくべき時間帯のようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)