香港では連日逃亡犯条例の改定施行を巡って市民が総動員でデモに参加し200万人規模という大きなものに発展していまも継続中です。
香港政府トップはすでに市民に謝罪をしていますが、市民は辞任を求めて大規模なデモを実施しており一触即発の状況が続いています。
逃亡犯条例の改定は単なる条例の実施という意味合いを超えて香港が英国から中国に返還された1997年7月以降22年間続いてきた「1国2制度」が一国制へと変化する大きな分岐点となることから、市民が大量に蜂起する形となっているわけですが、実は香港金融市場にとっても非常に大きな影響がでる問題になってきているのです。
事と次第によってはBREXITよりも大きな影響
香港はイギリスからの返還後も自由な貿易と金融が行われる特別な都市として発展を遂げてきたわけですが、現在も香港ドルの発行はHSBC,中国銀行、スタンダードチャータード銀行が行っており、香港自体が完全に中国共産党支配下となった場合には通貨発行権も失われることになりかねず、これだけでも現在米ドルとのペッグ制を実施している香港ドルがクラッシュする可能性がかなり高くなります。
足元でもこのペッグ制度の際安値に張り付いたままの香港ドルですが、2015年1月のスイス中銀ショックのようにもはや介入不能といったことになれば為替相場には大幅な影響がでることとなり本土通貨である人民元にもネガティブなインパクトが出かねない状況です。
すでに香港の金利は上昇を始めており、インターバンク貸し出しレートは大きく跳ね上がりいわゆる逆イールドも示現する始末で、金利がここからどんどん上昇するようでは不動産にも深刻な影響がでかねないところに来ています。
逃亡犯条例の改訂施行からはじまった今回の香港問題は思わぬ形でリスクを高めることになっており、これまで香港リスクなどはノーマークであったことからとんだブラックスワンのリスクになりかねない様相を呈し始めています。
とくに富豪や投資家の資金が集積している香港の金融市場から一斉に資金が逃げ始めますと相場が大きく崩れる可能性は高く、体制変更が裏にある場合には一時的な状況ではなくなる危険性がすでに指摘され始めています。
足元でビットコインが大大きく上昇をはじめているのもこれに関係があるのではないかという見方もされているだけに問題が大きくなった場合には本当に香港金融市場が崩壊しかねない点にはあらかじめ認識しておくべきところに来ています。
この市場起因のリスク回避の動きが強まった場合アジア各国にも多大な影響がでるだけに見過ごすことはできない状況になりつつあります。
習近平はG20に来日するのかも問題
香港に対するこうした政策の変更はあきらかに習近平が唱える一国制度の推進がその背後にあることは間違いなく、米国との貿易をはじめとする構造問題がうまく進展しない中にあって火種にならないうちに香港を引き寄せておこうと動いたことが完全に裏目に出ていることを物語っています。
このままG20で来日した場合香港問題が材料になることは間違いなさそうで、月末に向けて習近平がどうするのかも注目されます。米国は関税引き上げにやる気満々な姿勢を示していますしこのG20の二日あまりは相場にとってはかなりリスクの高まる瞬間になりそうで十分な注意が必要です。
どうも中国周辺で様子のおかしなことが頻発しはじめており、我々が想定していなかったような事態が起きる可能性が高まっています。
市場には今リスクが渦巻いていますのでさらに大きなリスクへ発展していかないことが望まれるところですが、何が起こるかわからないのが相場の常ですから、安心せずに常に情報のアンテナを張り巡らせて行きたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)