米中交渉は以前からUSTRのライトハイザーが中心人物であるとみられてきましたが、いよいよその状況が明確に示現しはじめてきております。
6月末の米中首脳会談自体本当に開かれるのかも危ういですし、実施されたとしてもとてもではないですが、合意に至る可能性は低そうで、このまま中国製品への関税率25%が月末に向けて拡大実施となった場合には相場はさらに下落することが予想されるだけに楽観視は禁物な状況です。
厳しい米国の声明が発表に
6月3日、米国通商代表部・USTRと同財務省は中国の最近の公式発言や2日に中国から公表された白書に対し、その内容がこれまでの米中の通商協議の本質と過程を誤って伝えるもので中国が非難合戦を追求しているとのかなり厳しい声明を発表しています。
これを見ますとおよそ協議がうまくいっておらず、しかもこのまま安易に妥協して合意がはかられる可能性は極めて薄そうで、今月については悪いことは起きてもいいことが起きることはほとんどなさそうな厳しい状況が垣間見えてきます。
米国の主張では米国が中国側からの詳細かつ履行可能な合意を要求するのは、中国の主権に対する脅威には全くなっていないからであるとされており、議論された問題は通商協定に共通するもので、維持することのできない根強い貿易赤字につながっているシステミックな問題への対処に必要だとこの構造的な部分の解決を強く訴えています。
これに対し中国側は米国が過剰な圧力によって中国に通商合意を強いているが、それを実現することはできないとかなり厳しい口調で非難しています。
これを見る限り本当にG20大阪の前後に米中の首脳会談が行われるかどうかは相当微妙な状況で、なんら成果が得られずに終わることも覚悟しておく必要がでてきているようです。
中国の反撃は何かが問題
関税の掛け合い合戦という点では中国は米国ほど輸入を行っていませんからすでに限界が見えてきている状況ですが、次になにを報復措置として出してくるかが非常に注目されます。
ひとつは市場の8割を占めるというレアアースの対米輸出禁止を打ち出してくるのは比較的高い可能性といえます。
レアアースの埋蔵量として中国は37%ほどですが、この精製をめぐって大量の放射能が発せられるのを中国人労働者に見て見ぬふりをしてやらせている結果がこれだけのシェアにつながっているわけですから話は相当ひどいものですが、短期的には米国のIT製品の製造や開発に大きな支障をきたす可能性がかなり高まりそうです。
また、つねに報復措置の可能性として語られるのが中国保有の米国債の売却で、たしかに足元では中国が新債券を購入しないだけでも影響が出始めているわけですから、保有債を売り浴びせされるようなことになれば中国自体の保有債券の価値も下がることにはなります。
米債と米株の市場がガタガタに荒らされるリスクがあるだけに禁じ手といえども最後には持ち出してくる危険性は相当に高いものといえます。
債券の売却は最終段階の秘密兵器となりそうですが、これをやられればもはや全面戦争に突入することは避けられずここからどういう落としどころが見つけられるのかが非常に厳しくなりそうで、相場への影響はより激しいものになることを覚悟しなくてはならなさそうです。
米国側はトランプということでくオールアメリカの体制で中国つぶしにかかっていますから想定外のこともかなり起こりそうで相場がさらにネガティブな動きを示現することにも一定の準備が必要になってきていることがわかります。
(この記事を書いた人:今市太郎)