2019年も早いものであっという間に5月が終了しようとしています。
しかし今年は年初に想定していた大きな政治的なイベントが悉く想定外の方向に進んでおり、事前に相場を予測することがざっくりとした方向感であってもかなり難しいことをいまさらながらに感じさせる展開となっていることに驚かされます。
具体的に何が想定と異なってしまったのかいくつか振り返ってみたいと思います。
BREXITの進捗は完全に事前予測を裏切る形に
今年の相場でまず何が驚いたといえば正月3日の朝、箱根駅伝がスタートする前にいきなり為替相場がクラッシュしたことで、これはさすがにまったく想定していなかった事態といえます。
ただ、これは事前に想定のできる話ではありませんでしたから、それ以外のリアリティのある話ということで思いつくのはやはり一連のBREXITの問題と言えるのではないでしょうか。
2年9か月も前から交渉期限がわかっていた話ですから、土壇場になって議会の対応がグダグダになり結局延期に持ち込まれるような体たらくな展開になるとはほとんど誰も思っていなかったはずで、今年はBREXITでポンドが大きく動くと思われた相場は完全に肩透かしを食う恰好になってしまいました。
■ポンド円 週足推移
いまさらながらにポンド円の週足などを見てみますと、2016年6月24日、投票が終わった直後にBREXIT回避かといった楽観的な投票結果のガセ情報が流れたために160円台までつけたポンド円はその日の昼前に26円もの下落を示現することになりました。
同年の10月には118.198円の安値を付けてからは何度も戻りを試す展開となりましたが、2018年以降は値幅も20円なく、結局BRXIT投票当日の160円が今も高値のままの状態で推移していることがわかります。
毎日報道ベースのヘッドラインで上げたり下げたり投げと踏みの応酬に終始した時間帯が長かったわけですが、結果論から言えば週足程度でボリンジャーバンドの+2σ以上に上昇したときに丹念に売っておき、-2σに到達したら買い戻すという作業を延々繰り返していれば100円以上とれていたであろうことが見えてきます。
つまり個別のヘッドラインニュースで上へ下へという動きについていかなくても結局BREXITを完全にやめるという選択肢が出てこない限りは常に下落のリスクにみまわれてきたことを改めて感じさせられます。
BRXITは終わったわけではなく10月に向けてまだまだ紆余曲折がありそうですが、こうしたかなり引きで見た冷静な取引というのもここからまだ考えられそうな状況です。
米中貿易戦争は全然収束しない
もうひとつ、大きな誤算となっているのが米中の貿易問題です。
この5か月あまりですっかり米国に騙される形となったのが米中貿易戦争の決着問題で、トランプツイートからさも交渉がうまく進捗しているかのような印象をもったわけですが、こちらも事実はまったく異なっていたようです。
足元ではファーウェイに対する禁輸問題がエスカレートしすっかり安全保障上の問題が顕在化している状況で、このままでは6月に米中首脳会談が開催されてどこか落としどころを探るといった楽観論はまったく通用しなくなっていることが窺われます。
株価を重視するトランプが株下げにつながるような政策はとらないといった楽観論もかなり登場したわけですが、冷静に考えてみれば大統領選挙までまだ1年半近い時間が残されていますから、今からとにかく株価が下げないように動くというのには無理があり、逆にこの間隙をぬって中国を叩きにでたのではないかとさえ思う状態です。
相場の見方というのは人によって実に様々ですが、かなりおおざっぱに見通しを立てていこうと思っても、こと政治が絡む材料に関しては先行きを予測するのはきわめて難しく、逆に先入観をもって取引することのほうが非常に危ないことを感じる5か月間であったといえます。
今年はまだ残り半年以上あるわけですが、何事もなく年末を迎えられるとは思えない状況で、まさかの事態があることだけは最初から想定して売買に取り組んでいくことが重要であることをあらためて痛感させられた次第です。
少なくとも自分の相場感だけに振り回せれて事実と乖離した発想をしてしまわないことだけは十分に注意していくことが必要なのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)